第百十七話
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なかったヨ……」
アリシャ・ルーが冗談めかして言った言葉に、その場にいた者が一様に苦笑いを込めていた。ところで位置が悪くて見えないからなのだろうが、リーファに散々『僕も! 僕もいるよリーファちゃん!』と言わんばかりに自己主張する、レコンにもお礼を言っておいて貰えないだろうか。スリーピング・ナイツを助けてもらったのは、恐らくは知り合いの彼の進言もあったのだろうが、それがリーファに届くことはなくレコンは人の波に飲まれていく。
「でもあんな見送られ方してさー。まさか一回負けたとかカッコ悪くない?」
「勝ったからよしで。それより、早く黒鉄宮見に行きません? ちょっと人数が」
このまま話し込んでしまいそうな雰囲気だったが、テッチの言う通りに人口密度が明らかにおかしかった。スリーピング・ナイツを加えたいつものメンバーに、シャムロックの攻略隊にシルフとケットシーの連合軍。そのどれもがフロアボス攻略を目指していたため、自分たちも含めて大人数の重武装であり、明らかに黒鉄宮前の収容人数をオーバーしていた。
「確かに。じゃあ……名前が書いてあるとこどっち!?」
「こっちこっち!」
とはいえユウキの身長では黒鉄宮も見えないらしく、どうにかアスナが誘導しつつ他のメンバーも道をあけていく。メンテナンスをしていたおかげで、俺は人口密度の濃いところからは逃れられていたが、おかげである景色のことを思い出していた。
この《はじまりの町》に集まる多くの人たち。それは俺がこの世界に足を踏み入れて、一番最初に見ていた光景だった。ふと気になってメニュー画面を見てみるものの、もちろんログアウトボタンが存在しない、なんてことはない。
「どうしたのショウキ。そんな深刻そうな表情して空見上げて」
「いや……何でも」
「もう赤いマントのGMなんて出て来ないわよ?」
「…………」
どうやら隣のリズも同じようなことを考えていたのか、からかうように笑われて彼女から目を逸らす。どうしてこう、心中を読まれてしまうのだろうか――などと考えながら、目を逸らした空には青空が広がっていた。リズの言っていた通り、もちろんデスゲームを知らせる赤いマントのGMなど存在せず、この場にプレイヤーたちが集まったのは、ただただユウキたちの挑戦を見守るというただそれだけだ。
「やったぁぁぁぁぁ!」
黒鉄宮から見知った声が響き渡るのを聞き、自然と頬が緩んでしまう。すると黒鉄宮の入り口からユウキが出て来たかと思えば、そのブンブンと振り回された手には、光り輝く記録結晶が握られていた。
「みんなで記念撮影しよ!」
「入んのかぁ!?」
「やってみなきゃ分かんないって! あ、ショウキ! パス!」
誰かからのツッコミに答えながら、ユウ
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