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イノセントデヴィル
(一)歪んだ反抗
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で歌うので驚きました。
 本当に天使のような歌声で。あんな歌い方、どこで覚えたんでしょうね。」
「さあ…。」
「お母さんが聖歌隊の歌を聞かせてらっしゃるんじゃ?」
「いいえ、一度も。」
「そうですか。じゃあ、自然に覚えたんでしょうか。すごいですね。」
「はあ。」
「ところで…、優香ちゃん、学校でのお話し、おうちでしてますか?」
「いいえ…、なにしろ無口な子で…。」
「うん…、実は学校でもすごくおとなしいんですよね、優香ちゃん。
 昼休みも一人教室に残って読書をしているんです。
 仲のいいお友達もいないようなので、世話好きな子に頼んで
 遊びに誘ってもらったりもするんですが…。
 優香ちゃんが誰かとおしゃべりしてるところ、
 私、一度も見たことがないような気がするんです。
 あまりにおとなしすぎて、かえって目立ってしまうというか…。
 お母さん、優香ちゃんのご家庭での様子はいかがですか。」
千鶴子は膝の上で組み合わせた指をしばらく見つめていた。
「同じです…。ひとりで部屋にこもって人形遊びや読書ばかりしています。
 あんな風に育ったのはたぶん私のせいでしょう。
 私の育て方が悪かったんだと思います。
 もっとみんなと仲良くするよう、私からよく言ってきかせますので。
 ほんとに、愛想のない子ですみません。」
「いえ、優香ちゃん、決して悪い子ではないんですよ。ただちょっと…」
「子供らしくないですよね、あの子。可愛げがないんです。」
「そんなことは…」
(先生もあの子の不愛想振りにはお手上げよね。
 親の私ですら不気味なんだもの。
 でもどうすりゃいいんだろう。
 やっぱり、精神科で診てもらったほうがいいのかなぁ…。
 ひょっとして、軽い自閉症なんじゃないかしら…。
 いっそ、そう診断が下ればどんなにほっとすることか。
 それなら私のせいじゃないんだから。)
「冷めないうちにどうぞ。」
「はあ。いただきます。」
気まずい空気をお茶で濁す。
「あの子、指しゃぶりの癖がちっとも治らなくて…」
「え? そうなんですか? 学校ではしてないですよ。」
「本当ですか?」
「ええ。見たことありませんけど。」
(どういうことだろう。
 あんなにしつこく言っても治らない指しゃぶりを、
 学校ではしてないなんて…。)
「学校では周りにお友達がいるので、恥ずかしいのかもしれませんね。
 きっと自分でも治そうと思ってるんでしょう。
 わかってるんですよ、ちゃんと。」
教師の言葉に千鶴子の目元が渋く笑った。

その日の夜、帰宅した夫に家庭訪問の様子を報告すると、
「ふーん、あいつ勉強はできるんだな。」
そう言いながらシャツと靴下を脱ぎ捨てる茂夫。
だが、友達がいないらしいと聞くと、
「そ
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