loss of memory〜幸せの意味〜 【アラタ1021】
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では単なる連絡ミスか、純粋に寝坊しているのかななんて思っていた。
でも、学校に着いてみたらそんな事はなく、凛ちゃんはいつも通りの笑顔で友達とお喋りをしていて‥‥。
ここからが一番問題。
彼女の記憶から、私が消え去っていたのだ。
多分、嘘とか演技とかじゃなく、ホントのホントに。
昨日までは、いつも通り一緒に学校に来て、学校でお話したり、一緒にご飯を食べたりしたのに。
今日会ってみたらあんな状態。しかも、それは凛ちゃんだけじゃなくて、真姫ちゃん、希ちゃん、絵里ちゃんも一緒だった。
なんでμ'sのみんなが一斉にそうなっちゃったかなんて分からない。でも、四人が一斉にそうなるなんてどう考えても‥‥。
そこまで考えたところで、花陽はあることに気づいた。
ーー他のみんなは?
穂乃果ちゃんにことりちゃん、海未ちゃんやにこちゃんは‥‥、一体どうなってるの? 今どこにいるの?
少なくても部室にはいなかったけど‥‥。
花陽はまだ、何も知らない。
※※※
カツ、カツ、カツ‥‥。
冬の夕暮れは寒い。特に朝焼けが見える時間に次いで気温の降下が激しい時間帯。時刻は午後六時を回った頃だ。辺りは既に幾本もの電灯が灯り、暗がりを照らしている。半ば夕暮れというよりは完全に夜だった。
今朝、凛ちゃんが来なくて一人で歩いた通学路。帰り道でも、響くのは自分の足音だけ。足元の硬いコンクリートに、規則的なローファーの打撃音は溶けていく。その足取りはもちろん重く、いつもよりペースも遅い。
「私‥‥、どうしたらいいんだろう」
今日何度この思考に至っただろうか。花陽はまたしても同じ疑問を問いかける。もちろん分かるわけなんてない。そもそも、どんなに優秀な人だろうとこんなこと、すぐに答えが出せるわけなどどこにもないだろう。
カツ、カツ、ピタリ。
花陽はふと歩みを止めた。よく見る風景、自分でも気づかないうちにとある場所まで歩いてきたから。
そこにあるのは『穂むら』と書かれた見慣れた和菓子屋の看板。曲作りや衣装づくりで何度も立ち寄った先輩の実家であり、そういえば、穂乃果ちゃんにスクールアイドルに誘われたのもここだったっけ。
私はついつい昔のことを思い出して感慨に耽る。ほっこりと暖かい気持ちになるが、すぐに選択に迫られた。
うぅ、寄ろうかな。それとも‥‥。
花陽は店の前に立ち止まったまま迷い、萎縮する。
大切な先輩たちに会っても、また私のことを覚えていないかもしれない。
ーー絶望。
もしかしたら、穂乃果ちゃんなら私のこと‥‥。
ーー希望。
彼女はしばらく逡巡する。絶望と希望の二択
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