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暁ラブライブ!アンソロジー【完結】
loss of memory〜幸せの意味〜 【アラタ1021】
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起き始めている。  
 花陽はそのような、普通の状況ではまるで想像もつかないほど大きな恐怖と直面を始めた。ーーでも。

 
 




 花陽はまだ、何も知らない。







※※※


 結局花陽は朝以来凛や真姫と一度も口を交わすことなく、ままならない恐怖感に怯えながら放課後を迎えた。

 みんなにこのことを伝えなきゃ。部室へと足を進めながら考える。
 花陽は別に早とちりな性格というわけではない。むしろ高校一年生というまだ幼い枠組みに入る年頃ながら、相手の感情や思考には人並み以上に敏感である。
 だからこそ、普通なら疑ってかかるようなこの事態を、花陽ははったりや冗談事じゃないという確信したのだ。

 もちろん理由もある。それは主に二つ。
  一つは、今朝の凛のこと。
 彼女が連絡をせずに待ち合わせ場所に遅れるなんてことはこれまで一度もなかったし、彼女は元気で少し間抜けなところもある反面、根っこは意外にも真面目。そんな彼女がおふざけで連絡を落とすなんて事はないはず。そのことを幼馴染みゆえに花陽はよく知っている。

 そして二つ目は‥‥二人のあの目。
 花陽はつい数時間前の光景を思い出す。
 同じグループのメンバーとして、同じ教室で学ぶクラスメイトとして。そして何より大切な親友として、花陽と凛と真姫は充実した時間をこれまで紡いできたのだ。しかし、今朝見たあの二人の目色にはそんなものはきれいさっぱり消し去ったかのように、何一つ輝きを纏って無かった。それどころか、花陽のこと覚えてもいなかった始末。

 私、どうしよう‥‥。

 そう考えているうちに、部室棟へと到着する。少し遅くなってしまったが、恐らく二年生あたりが練習着に着替えている頃だろう。
 花陽はどうやって二人のことを切り出すべきか考えながら、廊下を進む速度を落とす。

 徐々に重たい足取りとなりながらも、近づいたのは一階廊下の壁際にある木目状の扉。いつもの見慣れたそれを開く。


 ガチャリ。
 そこには、










 誰もいなかった。











「‥‥え?」

 花陽はあっけに取られて思わず声を上げる。彼女特有のか細く、それでいて甘えて欲しくなるような可愛いらしい声。

 目の前に広がるのは、いつも明々とつけられた照明もパソコンも落とされた暗闇の部屋。休憩やミーティングで幾度も使った、花陽にとってとても大切な場所は明らかに、おかしかった。

 今日‥‥休みだったっけ? 眼前に広がる景色を受け入れられなかったのか、逸脱した感想を浮かべる。

 いやいや、そんなことは無い。
 花陽は自分の思考を断ち切るように否定した。

 
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