loss of memory〜幸せの意味〜 【アラタ1021】
[4/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のの、特に疑う様子はない。でも、どこか理解の追いつかない思考。
「‥‥な、なにかの真似?」
「何が‥‥? 別に何の真似もしてないけど‥‥」
返ってきたのは至極普通の返答
故に花陽は大きく戸惑う。幼馴染みの表情使いや口調があまりに普段と変わらなすぎて、この説明のつかないおかしな状況をすんなり受け入れてしまいそうになる自分。
い、いやいやいや! おかしいよぉ!
「凛ちゃん、どうしちゃったの‥‥!?」
「凛は普通だよ。って、‥‥え? なんで凛の名前知ってるの?」
「‥‥‥‥」
きょとん。再度可愛い顔を傾ける。
どういうこと?
どういうこと?
どういう‥‥こと?
たくさんのクエスチョンマークが花陽の思考を飛び交った。
驚かせようとしてるの類なのか、何かの受け売りかなとか、そんないたずらっぽいことすら考えられないのだ。
だって、凛は花陽に嘘をついたことが一度もないから。
ーーもしかして、凛ちゃん記憶喪失?
そんな非現実的な想像さえ浮かんでしまう。恐怖に近く、しかしどこかそれとは違う別種の恐ろしい感覚が花陽を内から包み込む。彼女はそのあまり、もう一人のクラスメイトの席へと駆けよっていった。
「ま、真姫ちゃん! 凛ちゃんがおかしいの! ねえ‥‥ま、真姫ちゃん?」
西木野真姫。クルリとカールの巻かれた毛先が特徴的な赤髪の美少女。凛や花陽と同じ一年生であり、学年でもトップ成績の座を誇る。
花陽と凛と一緒にスクールアイドルを始め、それをきっかけに今ではもう親友。彼女はその性格ゆえに友達の少なかった中学時代に比べて、今ではかなり充実した高校生活をおくっているみたいなのだが‥‥。
崩壊。花陽の中でその印象は音を立てて崩れ落ちた。
ーー何故か。
ーー凛と同じ目をしていたから。
「あなた、誰よ」
端的な言葉のみで告げられる。
真姫特有の、切れ長な紫色の瞳。
いつもなら綺麗過ぎて羨ましくなるそれも、一切光を秘めていない。少し釣り上がった目元から伺い知れるのは明らかな他人行儀。いやそもそも初対面のそれ。
こ、怖い‥‥。
花陽は軽く足が震えるのを感じた。
「私のこと、分から、らないの‥‥?」
おそるおそる問いかける。花陽の口調は震え、涙を浮かべた。
「し、知ってる分けないでしょう? 今が初めてよ。あなたと話したのは」
あまり演技派ではないのか、アドリブでやっているために真姫のセリフはところどころたどたどしい。
しかし冷たく無感情な、まさしく花陽や凛と出会う以前の彼女の口調。
それだけでも、花陽はまるで心の中に包丁を突きつけられたような感覚だった。
何か恐ろしい事が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ