loss of memory〜幸せの意味〜 【アラタ1021】
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家族には聞こえないよう、小声でつぶやくように言葉を発す。私は涙を拭うこともしないまま鼻だけを何度も啜った。
そう、おかしいのはみんな。
でも、それに伴い私自身もおかしくなりそうだった。自分がいかにμ'sが好きだったのか、自分にとってμ'sがいかに大きな存在だったのか。自分がどれだけ小さく弱い人間なのか。それを理解すればするほど、精神が崩壊しそうになる。
μ'sが無くなるくらいなら私‥‥
私、死んだ方がいいのかな。
私の精神はかなり危険な状態にあった。今ふと浮かんだ事項にそれを自ら自覚する。本当は死ねる勇気なんてこれっぽっちもないのに、そうやって自分が危機迫っていること自体も快楽になるほどおかしくなってしまったのかな。
しかし。
『♪♪♪♪♪‥‥』
軽快な電子音。
着メロに設定してあったお気に入りのこの曲が、私の中のそんな空気を派手に打ち破る。同時に一気に身体の力は抜け落ち、聴覚だけがサウンドに集中してしまう。ユメノトビラ、皆で作った思い出の曲だ。
私は恐る恐るスマホを手に取る。
液晶に表示された文字を見て涙が僅かに乾いた。着信中。応答と拒否のタップゾーンがある以外は特に飾り気のない画面。
表示されていたのは『にこ先輩』
まだ出会ったばかりの頃に設定したから、先輩とついた文字。そして、μ'sのなかで唯一今日一度も遭遇することが出来なかった相手。
力の抜けた指で、応答ボタンをタップする。
「‥‥も、もしもし?」
『もしもし花陽! 大丈夫!?』
応答した瞬間の急激な大声。耳に響いたそれは。
ーーいつもの、大好きな先輩のそれだった。
「え? にこちゃん‥‥私のことわかるの?」
『分かるわよ! 花陽こそ、私のことわかるの?』
「う、うん!! わかるよ!」
急な気持ちの高上がりに、ナチュラルにオーバーリアクションをとる自分。まだ涙が目に浮かんでるのは分かるけど、すごく暖かい安心感が全身を包む。
よかったよぉ! にこちゃんだけでも無事なら、もしかするとみんなのそれも一時的なものかもしれない!
『ほんとによかった! 花陽は無事なのね』
「私は無事だよ! でも、みんなが‥‥」
私の言葉に急激に下がる会話のトーン。
『ええ。私の方は最初に希の様子がおかしくて、いつもの冗談かと思ったんだけど‥‥、その後絵里に相談しようとしたら、その絵里もおかしくて、ついでにことりや真姫も。というか、皆同じ状態みたいなの』
「私も、にこちゃん以外には全員会えたの。でも、やっぱり同じ感じで、私のことを覚えてなくて‥‥」
にこちゃんもどうや
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