285部分:第三十九話 炎の魔神達その八
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第三十九話 炎の魔神達その八
「よいな」
「それでは」
狂闘士達にとってエリスの言葉はまさにアーレスの言葉である。それならば逆らえる筈もなかった。それはドーマにしろ同じであった。
「わかりました」
「よいな。今はその時ではないのだ」
エリスはまた彼に告げた。
「その時になれば思う存分戦うがいい」
「ではエリス様、ここは」
「撤退ですか」
「そうだ。下がれ」
他の狂闘士達にも告げた言葉だった。
「下がってその時を待て。いいな」
「はい、畏まりました」
「では」
狂闘士達もそれに応えて頷くのだった。とはいってもやはり畏まってはいない。そうしてそのうえで静かにエリスに対して応えるのであった。
「この度の黄金聖闘士はだ」
「むっ!?」
アルデバランは自分達に顔を向けてきたエリスを見た。青い肌に赤い髪を持つその彼女は確かに美しいがやはり異形のものであった。
「タウラスだったな」
「そうだ」
彼女の言葉にも答えてみせるアルデバランだった。
「それがどうかしたというのか?」
「ふむ」
アルデバランの問いには応えずにまずは彼をまじまじと見るのだった。
「貴様もまた見事な戦士であるようだな」
「俺を認めるというのか」
「敵といえど認めることにやぶさかではない」
エリスはこうアルデバランにも言った。
「強ければ強い程な」
「だというのか」
「その通りだ。そして」
エリスはさらに言ってきた。
「強い相手程倒しがいがあるというものだ」
「それが俺だというのだな」
「如何にも。貴様のその力」
血塗られたような声で彼に告げるのだった。
「存分に発揮するがいい」
「言われずともな」
アルデバランにとってそれは最初から決めていることだった。
「それは見せてやろう」
「そうだ、それでいい」
エリスはアルデバランの今の言葉に満足したような声を出した。
「それでな。いいのだ」
「いいとは?」
妙に不穏なものを感じ声をあげたアルデバランだった。
「どういうことだ。それは」
「貴様が知らなくてもいいことだ」
しかしエリスはその問いには答えなかった。
「別にな」
「いいというのだな」
「問わぬのか?」
「一度問うて言わなかった相手にそれ以上問うつもりはない」
この辺りはやはりアルデバランであった。彼は黄金聖闘士達の中でもアイオリアと並んで最も男らしく毅然とした性格として知られているからだ。
「これでな」
「ふむ。それでいいのだな」
「いい。では話は終わりだな」
「如何にも」
話が終わったことも認めるエリスだった。
「それではだ。これで私も消えるとしよう」
「あれが争いの女神エリスだというのか」
「戦皇アーレスの妹にして今のトラキアを治める者」
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