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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十二話 嵐の前、静けさの後
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のが聞こえた。侯にはあの一件を全て話してある。もちろんケスラーやキスリングの闇の左手の事は伏せてだが……。
「宮内省と内務省か……。ノイケルン宮内尚書もフレーゲル内務尚書も喰えぬ男だからの、油断は出来ぬ」
「……」
ノイケルンはともかくフレーゲルが絡んでいるのは事実だろう。ラング一人で警察まで動かすなどできる事ではない。だが証拠が無い、それに存在が分かっているなら注意は必要だが恐れる事は無い。
問題は宮内省の顔の見えない男だ、この男の特定が最優先だろう。容疑者はギュンターが六人まで絞ったがノイケルンはその中の一人だ。ノイケルンなのか?
それ以上の話は出来なかった。バラ園の入り口が見えてきた。此処からは護衛は付いてこない。彼らは入り口で待機することになる。皇帝の元に行くとフリードリヒ四世はバラを見ていた。侯と二人、皇帝の前で片膝をついて礼を示した。
「御苦労じゃな、二人とも」
「はっ、陛下におかれましては……」
「やめよ、リヒテンラーデ侯。此処はバラ園、虚飾は無用じゃ」
「はっ」
「ラムスドルフが辞めたいと言って来た。自分には近衛兵の取調べは出来ぬと。部下を疑うのは許して欲しいとな。あれは部下思いゆえ辛いらしい。部下が自分を裏切ったとは思いたくないようじゃ」
「……」
「予はあれを死なせたくない、その一心であれに取調べを命じたが酷だったかの?」
「……」
酷では有ったろう、だが助けるにはそれしかなかったはずだ。
「陛下」
「何かな、ヴァレンシュタイン」
「臣が思いますに……」
そこから先は続けられなかった。突然背中に焼ける様な痛みが走った。体が弓なりに反り返り、そして横に倒れこむ。痛みで声も出せない。皇帝と侯の悲鳴が微かに聞こえる。そして今度は脇腹に同じ痛みが走った。今度は呻き声が出た。そして何かが俺に覆いかぶさってきた……。
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