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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十二話 嵐の前、静けさの後
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一番年が若い、皆納得すまい」
「ふむ、かといって味方殺しどもに総司令官などやらせては、皆前の敵より後ろの味方を気にするであろうな」
「……」
顔を顰めながら話すリッテンハイム侯の言葉に全く同感だった。クライストとヴァルテンベルクが此処に仲良く来たのを見たときは何かの冗談かと思ったものだ。あやつらに来られても軍の士気など欠片も上がらぬ。
あのまま軍に居ても活躍の場は与えられぬ。我等に味方すると言うより、ヴァレンシュタイン憎し、の思いなのであろうが、迷惑な事だ。
「ではグライフスか。宇宙艦隊総参謀長まで務めたのだ、誰も文句は言うまい」
「そうなるな、後でわしから伝えておこう」
「総司令官の発表は今日のうちが良かろう、あの小僧どもが来る前に終わらせておく事だ、自分が総司令官に就く等と言いかねんからな」
「人攫いと軍の指揮は違うであろう」
「それが分かるなら良いがな、分かると思うか?」
「……」
「そういうことだ、ではまた後で」
そう言うとリッテンハイム侯は自分の部屋に戻っていった。
やれやれだ。あの小僧どもには本当に面倒をかけさせられる。グライフスに総司令官就任を依頼せねばならんが、その前にあの男と話しておかねばならん。
その男、オフレッサー上級大将がわしの部屋に来たのは彼を呼んでからきっかり五分後だった。目の前に二メートルの巨体が立つと圧倒されるような思いがする。この男がトマホークを振り上げて迫ってくる姿はまさに恐怖以外の何物でもあるまい。
「お呼びですかな、ブラウンシュバイク公」
「うむ、卿に訊きたい事があってな」
「……」
「何故此処に来た? わしと卿は特別親しかったわけではない。むしろ卿は我等を嫌っておろう」
「……」
オフレッサーは何の感情も面に出さなかった。だが分かっている、我等がこの男の持つ血生臭さを何処かで嫌ったようにこの男も我等を嫌っていた。この男にとっては戦場に出ぬ我等など唾棄すべき存在だったろう。
「卿ならヴァレンシュタインの元で十分にやっていける。確かに彼の下にはリューネブルクが居るが卿の居場所が無いとも思えぬ。何故かな?」
「……はて、御迷惑でしたかな?」
微かに笑みを浮かべてオフレッサーが問いかけてきた。
「そうではない、ただ腑に落ちぬ、それだけだ。此処は将来に展望の持てぬ者だけが来る場所なのでな。卿には似合わぬと思っただけよ」
わしの言葉にオフレッサーは苦笑を浮かべた。
「将来に展望の持てぬ者ですか……。そうですな、小官は帝国が好きなのです。小官を装甲擲弾兵総監にまでしてくれた帝国が……。それではいけませぬかな」
「……」
「それにシャンタウ星域の会戦で反乱軍は壊滅しましたからな。骨のある相手がいなくなりました。小官もお払い箱か
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