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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十二話 嵐の前、静けさの後
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くなったようだ。気をつけるとしよう」
「そうだな、気をつけたほうが良いな」
そう言うとまたリッテンハイム侯は笑った。
我等の遣り取りをどう聞いたのか、蚊の泣くような小さな声でガームリヒ中佐が訪ねてきた。
「……エリザベート様、サビーネ様は」
「明日には此方に着くそうだ。ランズベルク伯から連絡が有った」
「では、その時点で直ぐに此方にお引取りしましょう」
「そうだな、二人に任せてもよいかな」
「はっ」
二人の事を考えると胸が痛んだ。どれだけ心細かったか、怖かったか。だが今度は戦場の真っ只中にあの二人を置くことになる。ランズベルクの小僧にどうにもならぬほどの怒りが湧いた。
「お二方にヴァレンシュタイン司令長官からの伝言を預かっております」
「……」
ヴァレンシュタインの伝言……。フェルナーの言葉に思わずリッテンハイム侯と顔を見合わせた。我等が何も言わぬ事にフェルナーは一瞬戸惑ったようだったが、低い声で続けた。
「残念だと……。この上は門閥貴族としての生き様を貫いて欲しいと」
「……」
残念……。門閥貴族としての生き様を貫く……。
門閥貴族として滅べ、これ以上は生にしがみつくなという事か……。小僧め、わしを誰だと思っておる。その程度の覚悟も無しにオットー・フォン・ブラウンシュバイクが反乱を起すと思うのか。
隣にいるリッテンハイム侯が苦笑するのが分かった。同じ思いなのだろう。
「確かに受け取った。御苦労だったなフェルナー、ガームリヒ中佐。下がってよいぞ」
フェルナーとガームリヒ中佐が居なくなるとリッテンハイム侯と二人きりになった。
「門閥貴族としての生き様か、なかなか洒落た事を言うではないか」
「そうだな。しかし我等が死ねば、門閥貴族としての生き様など見せられるものはおるまい」
リッテンハイム侯が深く頷くのが見えた。そして悪戯っぽい笑みを浮かべ問いかけてきた。
「……公に訊きたいのだが門閥貴族としての生き様とは何かな?」
「……卿とて分かっておろう。門閥貴族として死ぬ事よ、意味の無い誇りを抱いて死ぬ、それ以外の何物でもあるまい」
「……愚かな事では有るが、覚悟だけは必要なようだ」
「うむ」
「有り難い事だ、狡賢く生きろ等と言われるよりは遥かにましであろう、違うかな?」
リッテンハイム侯が笑い出した。最近この男は妙に良く笑う、それも朗らかに。困った男だ、わしまで釣られてしまうではないか。一頻り笑った後、侯が問いかけてきた。
「それで、話が途中になっていたが総司令官の人選だがどうするかな? 階級ではオフレッサーだが、あの男は地上戦が専門だ。艦隊戦など出来ぬだろうし、やりたがらぬであろう」
「確かにな、シュターデンがやりたがっているが、大将達の間ではあの男は
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