第七章
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「ほんまにやったな」
「ほんまに?」
「っていうと何や」
「世襲や」
彼は公務員になった、そこで同期の者達にこう言ったのだ。質素で事務的な職場の中で。
「国家元首のな」
「共産主義やのにな」
「こんなんはじめて見たわ」
「共産主義ってそれないやろ」
「世襲なんてな」
「そう思うけどな」
賢章の今の言葉はシニカルだった、昼休みに職場で出前のうどんを食べつつその職場のテレビのニュースを観ながらの言葉だ。
「あの国はちゃうらしいな」
「あの、僕学校で先生に言われたんですけど」
高校を出たばかりで彼より一年後に入った二十歳になったばかりの後輩の言葉だ。
「あの国はほんまにええ国で地上の楽園て」
「それ高校か?中学か?」
賢章はその後輩、新婚ほやほやなので愛妻弁当を貰っている彼に問うた。
「どっちで言われたんや」
「中学です」
「そこでか」
「菅野って先生に」
「あの先生転勤してたんやな」
賢章は懐かしい名前を聞いたと思いつつ呟いた。
「自分の中学に」
「もういつも共産主義とかあの国とか褒めてました」
「相変わらずやな」
「僕が三年の時にいなくなりましたけど」
「それはまた何でや」
「学校の金ネコババしてて生徒の女の子に手を出したのもばれまして」
そうした悪事がというのだ。
「それでクビになりました」
「懲戒免職かいな」
「そうなりました、ずっと組合の力で揉み消していたそうですが」
そうした悪事をというのだ。
「遂に警察にばれまして」
「そうなったんやな」
「外で女の子に襲いかかったところを捕まりまして」
現行犯逮捕、そうなったというのだ。
「言い逃れも揉み消しも出来ないことしでかしまして」
「それで今は刑務所の中か」
「裁判でそうなったみたいですね」
「おかしな先生思うてたが」
その菅野についてだ、賢章は思った。
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