第二章
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「死ぬかも知れんかったって」
「よおさん死んだ」
実際にという返事だった。
「六人に一人はな」
「シベリアで死んだんやな」
「ソ連に殺されたんや」
他ならぬその国にというのだ。
「あの国にな」
「共産主義の」
「そや、あの国は皆平等っていうやろ」
「ちゃうんやな」
「全然ちゃう」
間違ってもという言葉だった。
「平和勢力とも言うけどな」
「それもちゃうんやな」
「満州で平気で約束破って攻めてきたんや」
それ故にというのだ。
「平和勢力はそんなことせん、シベリアでもな」
「よおさん死んだって言うけど」
「寒いところでずっと働かされてな、そこで見た」
ソ連の実情、それをというのだ。
「あそこは役人ばかり偉そうにしてる」
「実際そうなん」
「そや」
まさにという返事だった。
「ほんまにな」
「そうやったんやな」
「平等な国とちゃう」
「ほなこの前革命が起こったけど」
「あの国やな」
「あの国もそうなん?」
「絶対にそうや」
断言での言葉だった。
「そうした国や」
「そうなん」
「あの国も共産主義や」
それ故にというのだ。
「絶対にや」
「ソ連みたいな国になるんやな」
「そうなるわ」
「ううん、そうなんか」
「見とくんや」
祖父の言葉は強いままだった。
「あの国がどんな国か次第にわかるわ」
「今すぐちゃうんか」
「すぐにわかることと徐々にわかることがあるんや」
昭彦は賢章に言った。
「世の中はな」
「それでかいな」
「そや、このことはな」
「徐々になんやな」
「わかるもんや」
「ほな」
賢章もだ、祖父があまりにも自信を持って言うので信じることにした、そもそも祖父を尊敬しているので常にそうであるが。
「見てみるわ」
「ああ、先生信じるか祖父ちゃん信じるか」
「先生が嘘言うとは思えんけど」
正しいことを教えるのが教師と思っているからだ、彼はまだこの時はこの迷信を信じていたのだ。
「祖父ちゃん嘘言わんし色々知ってるし」
「陸軍の軍人はそや」
「嘘言わんねんな」
「策略は使うけど嘘は言わんしいつも勉強してる」
「そやから会社でも重役やねんな」
「雇ってもらったんやけどな」
会社の方はとだ、ここは笑って言った。
「それでもな」
「言うことはやな」
「そや、嘘やない」
確かな声で言ってだった、そして。
賢章は祖父の言葉を信じてその国を見ることにした、マスコミも菅野をはじめとした教師達も持て囃すが。
彼はいつも祖父が自分に言ったことを思い出しながらだ、友人達にも言った。
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