暁 〜小説投稿サイト〜
天使のエンブレム
第六章

[8]前話 [2]次話
 まただった、今度は。
「左の第二エンジン停まりました」
 今度は下部銃座のジェライント=マロリー上等兵が報告した。
「これで二つですね」
「普通に言うな、また故障か」
 今度はかなり忌々しげに言ったキートンだった。
「まずいな」
「残り二つですね」
「あと一つでアウトだ」 
 エンジンが停止すればというのだ。
「もう逃げるしかないぞ」
「不時着ですか」
 ブルーはこう問うた。
「その時は」
「違う、逃げるんだぞ」
「脱出ですか」
「パラシュートでな」
「そうするしかないですか」
「若し開かないとアウトだ」
 そのパラシュートがというのだ。
「狼煙になればな」
「それは嫌ですね」
「時々あるからな」
 そのパラシュートが開かないことがというのだ。
「それは」
「嫌な話ですね」
「そうでなくてもだ」
 あと一つでもエンジンが停止する、そうした状況になり千人脱出せざるを得ない状況に陥ってしまわなくてもというのだ。
「速度が落ちてるしな」
「エンジン二つ完全に停止してますしね」
「燃料も残り少ない」
「何か変に減りが速くないですか?」
「燃料漏れてるのか?」
 キートンはその減りの速さにこう推察した。
「これは」
「これで基地まで戻れますかね」
「まずいか?」
 かなり真剣にだ、キートンは言った。
「これは」
「そうですよね」
「エンジンが二つ停止して燃料の消費も速くてな」
「しかも残り少ない」
「これはまずいな」
「本当にそうですね」
「不時着か」
 今度は自分から言った。
「これは」
「あれも衝撃きますからね」
「危ないな」
「はい、怪我位は覚悟しないと」
 最悪死ぬこともある、だから不時着も実際は危険なのだ。
「まあドーバーを越えられそうですがね」
「イギリスには戻れるか」
 この国自体にはというのだ、基地のある。
「それ位は出来そうか」
「ですね、それ位は」
「海で泳ぐことはないな」
 ドーバー海峡に落ちてだ。
「それはないな、じゃあな」
「不時着ですか」
「そうなるか、皆怪我はしても死ぬなよ」
「わかりました」
 ブルーはキートンにこう応えた。
「その時は」
「出来れば基地まで全員無傷で帰りたいがな」
「これが最後ですからね」
 ブルーもかなり真剣な顔である、危機を前にして。
 そしてだ、こうキートンに言った。
「絶対にですね」
「ああ、何とかなりたいな」
「最後ですから」
 こうしたことを話してだ、そしてだった。
 二人も他の搭乗員達も必死にだった、基地まで戻ろうと必死になった。しかしエンジンが二つ停止していて燃料もどうなるかわからない。だからこそ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ