第二章
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納得してもだ、彼はアメリカ軍にいるのでこう言ったのだった。
「撃墜されるのは嫌ですからね、俺達も」
「死ぬのはな」
「はい、ですから」
「奴等には早く降伏してもらいたい」
「そういうことですね」
「降伏するまで生きたいからな」
「そしてアメリカに帰りたいですからね」
彼等の祖国にというのだ。だが。
やはりドイツ軍はしぶとい、そして必死になって彼等を攻撃してくる。幾らBー17でも撃墜される機体が出て来るのだ。
だからだ、キートンも言うのだ。
「どうすればいい」
「最後まで生き残るには」
「ああ、出来る限りのことはやってるからな」
「そうですよね、俺達なりに」
「後出来ることはな」
キートンはここでこうも言った。
「神様に頼むしかないな」
「ですね、本当に」
「教会でお祈りするか」
「そうします?」
「ああ、それにな」
「それに?」
「最近うちの軍で流行ってるよな」
その相当に被弾している自分達の機体を見ての言葉だ。
「機首にエンブレム描くのな」
「ああ、ヌードとか描いてますね」
「あれ俺達もやるか?」
「ヌード描くんですか?」
「馬鹿言え、そんなことしてもな」
それこそというのだ。
「神様が助けてくれるか」
「まあないですね」
「それこそヌードなんか描いていたらな」
それではというのだ。
「戦闘機どころか高射砲の弾に当たるぞ」
「そうしたら一発でアウトですからね」
幾ら頑丈なBー17でもというのだ。
「あの高射砲戦車砲にも使われてますからね」
「戦車が破壊されるんだぞ」
「ですね、実際一発でバラバラになってますから」
高射砲弾を受けた機体がだ。
「あんなの受けたら」
「受けたくないな」
「戦闘機の攻撃よりも」
「だったらヌードは描かないでな」
「じゃあ何を描きます?」
「神様だからな」
ここでまた神のことを言ったのだった。
「天使にするぞ」
「天使ですか」
「そうだ、天使のエンブレムをな」
「機首に描くんですね」
「最後は神頼みだ」
自分達が出来る限りのことをしている、それなら最後はというのだ。
「それしかないからな」
「天使描きますか」
「そうするか」
「じゃあ他の連中呼びますね」
ブルーはキートンの言葉を受けて他の搭乗員を呼ぶと言った。
「それで皆で描きましょう」
「皆アメリカに帰りたいよな」
「生きて帰らないと」
それこそというのだ。
「妹に男の子が生まれまして」
「その子に会いたいんだな」
「はい、ですから」
「そうか、じゃあ絶対に生きて帰らないとな」
「中尉もですよね」
「折角結婚したのにな」
キートンも苦い顔で言う。
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