第一章
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天使のエンブレム
イギリスからドイツ本土まで爆撃に行って帰還する、言葉で言うとそれだけだ。
だが実際に出撃する爆撃機の搭乗員達はいつも命懸けだった。
「今日も随分来ているな」
「飛行機工場も爆撃して撃墜もされてる筈なんだがな」
「まだまだ戦闘機は多いな」
「しぶとい奴等だ」
爆撃機の搭乗員達は迎撃に来たドイツ軍の戦闘機達を見て忌々しげに言っていた、祖国を爆撃に来る彼等が迎撃されるのは当然のことだった。
しかし彼等にとってはたまったものではない、それで口々に言うのだ。
「さっさと来なくなって欲しいな」
「護衛戦闘機が守っていても来る奴は来るしな」
「機銃を撃って弾幕で近寄れない様にしても」
「絶対じゃないからな」
彼等が乗るボーイングBー17はフライングフォートレスという名前通り重装備だ、合わせて十三丁の機銃が装備されている。
それで弾幕を作って敵を寄せ付けないのだ、しかし来る戦闘機はあるので。
攻撃を受ける、そして撃墜される機体もあった。
だからだ、彼等は出撃の度に言っていた。
「今日も生きて帰りたいな」
「当たり前だろ、それは」
「生きてこそ美味いものが食える」
「可愛い娘と遊べるんだからな」
こうしたことを言いながらだ、彼等は何とか生きようとしていた。しかし。
基地に戻ってだ、戻って来なかった機体を確認して思うのだった。
「あいつ等やられたか」
「パラシュートは人数分出てたらしいぞ」
「じゃあ全員無事か?」
「落ちた場所はまだナチスの占領地らしいけれどな」
「捕まってないといいな」
「全くだな」
こうした話をしていた、そして。
ロンドン近郊の基地の一つでだ、ロナルド=キートン中尉は苦い顔で自分が機長を務めているその機体を見て言っていた。
「今日は随分やられたな」
「ええ、一機しつこいメッサーいましたからね」
副機長のミッキー=ブルー少尉も苦い顔だ。キートンは黒がかったブラウンの髪に青い目のがっしりとした大男でブルーは細くその彼よりも背が高い。目は黒で髪はブロンドだ。年齢はブルーの方が二歳位若い感じだ。
「そいつに」
「あいつかなり撃ってきたしな」
「全員無事でしたけどな」
「ああ、しかしな」
それでもと言ったキートンだった。
「被弾がな」
「これBー17じゃないとアウトでしたね」
「Bー24でもな」
アメリカ軍の持っているもう一つの重爆撃機だ、ただしこちらの爆撃機はドイツ本土への爆撃には主に使われていない。
「危なかったかもな」
「こいつは頑丈ですからね」
「頑丈でもな」
そのBー17でもというのだ。
「落とされる時は落とされるかな」
「落ない飛行機なんてありませんからね」
「ああ、だからな」
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