第四章
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「それぞれの学部に行こうな」
「そうするか」
「ああ、その時はな」
「いいな、それ」
玲旺は微笑んでだ、琢矢の言葉に頷いた。そしてだった。
自分の隣にいる彼に顔を向けてだ、この言葉を送った。
「その時は一緒だ」
「完全にな」
「それで半分だ」
「そうなろうな」
バイトの時点で既にそうだとしてもとだ、二人は約束した。そしてだった。
二人はそれぞれの家に帰った、そのうえで春休みはお互いにアルバイトをして過ごした。そのうえで入学式の時にだ。
桜が咲き誇る学園の中、春の優しい日差しを浴びながら。
琢矢と玲旺は大学の方に向かって二人並んで歩いていた、二人共今は整ったスーツを着ている。
琢矢は玲旺のスーツ姿を見てだ、面白そうに笑って言った。
「似合ってないな」
「そんなにか?」
「何か随分とな」
「そうか」
「ああ、俺もそうかも知れないけれどな」
玲旺はというのだ。
「どうにもな」
「スーツ着たのはじめてだしな」
「はじめてか」
「ああ、これがな」
「俺はブレザーだったからな」
そちらの制服を着ていたからだとだ、琢矢は言った。
「まだましか」
「そういえばブレザーみたいな感じだな」
「結局ブレザーってスーツだからな」
「ネクタイ締めてな」
「だからか」
「詰襟だったからな、中学からずっと」
玲旺は難しい顔で琢矢に返した。
「スーツなんてな」
「はじめてなんだな、ブレザーの意味でも」
「こうした服も私服で持ってなかったしな」
「それでか」
「ああ、何か動きにくいしな」
「そうか、けれどな」
「これからな」
玲旺は今は笑顔で応えた、スーツに慣れないながらも。
「行くか、入学式」
「そしてそこでな」
「別れような」
「また連絡しろよ」
「わかってるさ。また時々会おうな」
「その時は宜しくな」
二人で笑顔で話す、そしてだった。
入学式が行われる学園の大講堂に入るとだ、二人は手を振り合って別れた、そのうえでそれぞれの場所に向かった。二人のそれからの場所に。
卒業式 完
2016・3・23
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