第一章
[2]次話
卒業式
遂にこの時が来た、それで。
岩鬼琢矢と殿間玲旺はしみじみとして話をした。
「卒業か」
「ああ、もうすぐな」
「あと三日か」
「それでだな」
二人で高校の帰り路を進みながら話す。
「終わりだな」
「長いって思ってたらな」
「あっという間だったな」
「全くだな」
こうした話をするのだった、そして。
ふとだ、琢矢は玲旺にこうしたことを言った。
「それで御前な」
「何だよ」
「いや、進路な」
琢矢が言うのはこのことだった。
「卒業したら大学だろ」
「それ御前と同じだろ」
これが玲旺の返事だった、見れば。
玲旺は少し脱色して薄茶色にした髪を右で分けている、唇は薄く白い肌の細面だ。耳は大きく眉は端に行くに従い広くなっている。背は一七〇程だ。
琢矢は穏やかな顔立ちで一文字に口である。眉は太めで黒髪にやや茶色を入れていてショートカットにしている。背は玲旺より二センチ位高い。二人共痩せ気味である。
その玲旺がだ、琢矢に言うのだ。
「俺だってな」
「まあそれはな」
琢矢もこう返す。
「大学行くからな」
「八条大学な」
「経済学部な」
「俺もな」
玲旺は自分のことも言った。
「同じ八条大学だしな」
「ただ御前は社会学部だよな」
「ああ」
微笑んでだ、玲旺は琢矢に答えた。
「同じ八条大学だな」
「卒業しても一緒か」
「そうだな、ただ大学は学部違うと別らしいからな」
「もう会うことも少ないか」
「そうなるぜ、だから卒業式の後はな」
高校を卒業すればというのだ。
「もうな」
「お別れだな」
「半分位な」
「半分か」
「そうだろ」
まさにというのだ。
「同じ大学でもだからな」
「じゃあ大学の中で会ったらな」
「宜しくな」
そうした話をしながらだ、二人は共に夕暮れの道を歩いていた。途中吉野家に寄ったりもしたがこの時もだった。
牛丼を食べつつだ、玲旺から言った。
「こうしてな」
「二人で一緒に牛丼食うのもな」
「終わりか」
「会うことが減ったらな」
「俺達三年同じクラスでな」
「同じサッカー部でな」
「一緒だったからな」
それこそというのだ。
「だからな」
「ああ、普通にな」
それこそというのだ。
「こうして一緒にいたな」
「一緒に牛丼食ったな」
「それも終わりか」
「そうだな」
こう話すのだった、そして。
ここでだ、琢矢も言った。
「最後の牛丼か」
「二人で食うな」
「そう思うと何か違う味だな」
「そうだな、この店はまた入るけれどな」
そして牛丼を食べるがというのだ、二人共牛丼の特盛に卵を入れさらに紅生姜をかけてかき混ぜってから食べている。
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