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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十一話 内戦の始まり
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助を求められてもそれには応じない。そして艦隊をフェザーン方面に出す。規模は三個艦隊だな」
「!」
ホアン、ネグロポンティは驚いている。今このときに艦隊を出す、それも三個艦隊。本国は殆ど空になりかねない。残りは編制途上の一個艦隊が有るだけだ。
「私も議長の意見に賛成だ。同盟が後ろにいるとなればルビンスキーは強気になるだろう。それでは帝国軍がフェザーンを占拠する可能性が出てくる。先ずルビンスキーを孤立させる」
「……」
「艦隊を派遣するのは帝国のフェザーン占拠を許さないためだ。フェザーン回廊の中立を維持するためにも艦隊の派遣は止むを得ないと思う」
「……」
「レベロの言う通りだ。万一帝国にフェザーン占拠を許してしまうと大変な問題になる。安全保障の問題も有るが、捕虜を取り返すためにフェザーンを見殺しにした等と言われかねない。それは政権の致命傷になる」
その通りだ。私は、トリューニヒトの言葉に頷いた。ネグロポンティ、ホアンも深刻な表情で頷いている。一方軍人たちは頷いてはいるがそれほど深刻な表情はしていない。協力はするが必ずしもトリューニヒト政権に対して好意を抱いていると言うわけではないか……。
「議長、一つだけ確認させてください」
「何かねボロディン本部長」
「三個艦隊はあくまで外交交渉の道具として使うのですね、戦うためではなく」
「もちろんだ。帝国と戦争などすれば捕虜交換も吹き飛んでしまう。そんな事は論外だ」
「それを聞いて安心しました。万一帝国との戦闘になって大敗でもすれば同盟は二進も三進も行かなくなります。それだけは忘れないでください」
ボロディン本部長の言葉にトリューニヒトは黙って頷いた。
「そちらも艦隊司令官達に良く注意してくれ。戦争ではなく交渉でフェザーン回廊は守るのだとね」
帝国暦 487年 11月30日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「すまないな、エーリッヒ」
「気にしなくて良い。とりあえず六人の中にいるんだ、いざとなれば全員捕らえてもいいさ」
「無茶苦茶だな、また何か分かったら連絡する」
「ああ、待っているよ」
暗くなったTV電話のスクリーンを見ながらキスリングの事を考えた。此処最近、頻繁にキスリングが連絡をしてくる。例の三年前の事件から宮内省の顔の見えない男を洗い出そうとしているのだが、なかなか調査は進まない。
三年前の事件を調べなおしているのだ。おまけに肝心のビーレフェルト伯爵は死んでいる。そう簡単に顔の見えない男が分かるとも思えない。気にするなと言うのだが、あまり効果は無いようだ。
宮内省の局長以上の人間、尚書、次官、そして八名の局長、計十人の中に顔の無い男はいる。今のところ除外できるのは四名、二人は去年
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