外伝 煩雑な日常4連発
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うとしたところ、偶然好物の料理が複数あったということでアイズが仲間になりたそうにこちらを見て来たので席に招いた。よってアイズは上機嫌なのである。……普段冷たく話しかけてこないオーネストに「食うか?」と問われてちょっと嬉しかったというのもある。
――なお、この光景を見ていたベートはアイズを横取りされた嫉妬とオーネストの意外すぎる一面を見た驚きで一人百面相をしていたが、「オーネストの野郎がアイズに手を出す筈がねぇ」となんとか自分の中で折り合いをつけた模様である。周囲にものすごく笑われて結局キレたが。
オーネストはかなり人でなしで暴君だが、それは自分の我儘を一方的に押し付けるはた迷惑なものとは性質が異なる。故に、普通のことを当たり前にすることだってある。そんな普通の雰囲気でいつもいてくれればいいものを、とリューは内心で溜息をつくが、こうして静かに隣席で座っている彼の顔がほんの僅かにリラックスしていることに気付き、思わず頬を緩ませる。
(昔は些細なことでも拒絶意志の防壁で心を封じ込めていたのに……少しずつ、変われているのですね)
「アイズ、お前口元に飯粒がついているぞ」
「えっ、ホント?」
「あ、私が取りましょう。ほら、じっとしてて……」
「ん………」
従業員としてそこまでする必要はないが、どこか子供っぽいアイズは不思議と見ていて世話を焼きたくなる。紙ナプキンを手に取ったリューはアイズの口元を丁寧に拭い、アイズはそれに身を任せる。まるで母親に世話される娘のようだ。
というか、このやりとりがまるで一般家庭のワンシーンのようである。もちろんそれにオーネストとリューも途中で気づいたが、言葉に出さなければそのまま流せる。からかわれるのが嫌いな二人はさりげなく周囲を盗み見たが、幸い目線はアズとロキが集めてくれているようだった。
まぁ、こんな瞬間があっても悪い事ではない――そう思い、オーネストが席を立とうとした矢先に……それは起きた。
「なんだか、パパとママがいた頃みたい……」
「「!?」」
ぼそりと、消えてしまいそうなほどか弱い声。両親を亡くして尚戦い続ける少女、アイズ・ヴァレンシュタインが漏らしてしまった色々と致命的な本音であった。その言葉にオーネストとリューがかちんと固まっているのに気付いたアイズは、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……ごめん、なんでもない」
「い、いえその……」
リューが狼狽える。彼女からすればアイズは子供だ。ファミリアは家族同然とはいえ、血縁の家族をアイズが持たないことも知っているリューからすれば、その言葉は余りにも重く悲しい呟きだった。
(こ、こんな時にはなんと言えばいいんですか……)
何か慰めの言葉の一つくらいはかけてあげたいのに、言葉が見つからない。
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