第三章
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「もてなして頂きます」
「そんなことはしていませんが」
「そうですよね」
ピエールもフセインも微妙な顔で話した。
「医者ですから」
「そうしたことは当然で」
「それにあの人は軽傷でしたし」
「そこまでは」
「いえ、お礼は必ずする」
青年は遠慮しようとする二人に言った。
「それが我が家の家訓なので」
「だからですか」
「我々を」
「お礼としておもてなしさせて頂きます、それに」
青年は微笑んで二人にこうも言った。
「実は今日は周りの家族が集まって宴を開いていまして」
「宴をですか」
「そちらをですか」
「はい、お二人もいらして下さい」
その宴にというのだ。
「是非」
「どうしますか」
フセインは考える顔になって彼から見て年配者にあたるピエールに尋ねた。
「ここは」
「そうだね、今は比較的時間もあるしね」
「それでは」
「ここまで誘ってくれるのを断るのも悪いし」
「受けますか」
「そうしよう」
ピエールは考えてから決めた。
「今回はね」
「では」
「うん、そうね」
二人で話してだ、そのうえで青年に対してそれではと答えた、こうして二人は用意された駱駝にそれぞれ乗ってだった。
青年に街の近郊に案内された、そこには幾つかのテントが集まっていて羊や犬、馬や駱駝といった家畜達がいて。
ベドウィンの人達が宴の用意をしていた、そして二人のところにだ。
あの怪我をしていた男が包帯を巻いている手を庇いながら来てだ、笑顔で挨拶をしてきた。
「ようこそ」
「いえ、お招き有り難うございます」
「何、助けてくれたんですから」
男は二人に笑ってこう返した。
「ですから」
「このことはですか」
「当然のことです」
そうだというのだ。
「ですから今日は楽しんで下さい」
「ご馳走を沢山出しますので」
青年も二人に話す。
「お楽しみを」
「今日はうちの一番上の娘の結婚式もあります」
「僕の妹です」
二人にこのことも話した。
「ですからそっちも楽しみにして下さい」
「賑やかにしますので」
「ベドウィン人の結婚式ですか」
それが開かれると聞いてだ、ピエールは目を輝かせそのうえで言った。
「そういえばはじめて見るな」
「はい、私もです」
フセインもこう言う。
「言われてみますと」
「そうだよね」
「はい、どんな感じなのか」
「楽しみだね」
「そうですね」
二人はこのことに期待した、そしてだった。
宴がはじまった、料理は羊や乳製品が多かった。素朴だがその味は。
「うん、いいね」
「そうですね」
「何というか遊牧民のね」
「生活を感じますね」
「モンゴルとかね」
ピエールは遊牧民の代名詞と言っていいこの国の名前を出した。
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