君のことは。 【映日果】
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感覚は訪れなかった。同時に人が倒れる音が聞こえた。
恐る恐る目を開け、映った光景は
――血だまりの中に沈む春人だった。
「は、はると、くん……?」
花陽は恐々名前を呼ぶ。
「はなよ、ちゃん……だ、大丈夫だった……?」
呼びかけに答えるようにゆっくりと立ち上がる。
腹回りは血にまみれ、流れ出した血で顔も汚れた彼は笑っていた。
「花陽ちゃんたちは……絶対に、守る……」
そう言って、一歩、また一歩と不良たちに近づく春人。
「ば、ばけもの……き、気持ち悪いんだよ……こっちくんな!!」
不良たちは一人、また一人と消えていき春人を刺しと張本人も狂っているような春人の姿についに逃げ出した。
「もう……大丈、夫……だよ……はなよ、ちゃん、りん、ちゃ……」
安心させようといつも通りの笑顔を見せようとした春人が花陽と凛に振り返る。
「ひぅっ!」
「こ、こないで……」
「え……?」
普段のように近づこうとした春人の足が止まる。
「こ、怖い……」
「こわいにゃ……」
あからさまに距離を取る二人。
「な、なん、で……」
守りたかったものに拒絶され、彼は何を最期に思ったのか。それは彼にしかわかりえないが少なくとも失意のどん底にいることは間違いないだろう。
その光景を最期に、彼の時間は止まった。
春人は他の人の通報により病院に運ばれた。
奇跡的に重要臓器、重要血管は避けていて一命はとりとめました。だが、出血量が多すぎた。
――脳死の可能性
医者から言われた診断はこれだった。
脳死、蘇生する可能性がある植物状態とは違い、二度と意識を取り戻すことはない、完全に機械に生かされているだけの状態。
花陽と凛はあの時拒絶した罪悪感からか一度もお見舞いに来ていない。
花陽はご飯がのどを通らなくなり、自室にこもって泣いてばかりいる。
凛は夜走ることがなくなり、あのラーメンの屋台行くこともなくなった。
そして……
――彼女たちは悲しみだけを心に抱え
――春人との記憶をすべて忘れ
――彼の存在自体を忘れ去った
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