君のことは。 【映日果】
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「今日はお買い物付き合ってくれてありがとね、凛ちゃん」
「凛もかよちんとお買い物するの好きだから気にすることないにゃ」
手にはいくつも紙袋を持った女子高生が二人、わいわい話しながら帰っていた。
この二人はμ'sのメンバーの小泉花陽と星空凛である。
トップアイドルである彼女たちもプライベートでは普通の女子高生。楽しく買い物をしてきた帰り道。
「あれ……?」
ふと凛が足を止めた。
「どうしたの、凜ちゃん?」
「近くで猫ちゃんの声が聞こえた気がする……」
「そう? 私は全然だったけど……」
花陽より凛の方がこういうことに、特に猫の鳴き声にはとても敏感であることを彼女は知っていた。それゆえに
――気のせいじゃない?
そんなことを言うことはできず。
「ちょっと探してみる?」
そう、親友に答えてしまった。
「うん! ありがと、かよちん!」
凛はすぐに駆け出す。当然、元陸上部の彼女のスピードに花陽はついていけないわけで。
「ま、待ってよ、凛ちゃん!」
あっという間に置いて行かれた。
「あれ、かよちん? またおいてきちゃったにゃ……」
またやってしまった、凛はそんな風に一瞬落ち込んだが、すぐに追いつくだろうと楽観してまた猫探しに注意を戻した。
「凛ちゃん、どこに行っちゃったのかな? たぶんこっちに来たと思うんだけど……」
遅れること数分、先ほどまで凛がいたところに花陽がやってくる。
「凛ちゃ〜ん! どこぉ?」
花陽が心細そうに声をかけながら探し始める花陽。奇しくもそれは凛が進んだ方向と同じだった。
かくして二人は徐々に距離が縮めていく。
「やめて! なんでねこちゃんをいじめるにゃ!」
ある路地に差し掛かった時、花陽は親友の声を聴き、その路地を覗き込んだ。
「猫ちゃんどこかにゃ〜?」
走りながら路地をのぞき込みつつ探していく。
「おっかしいなぁ、こっちじゃなかったのかにゃ?」
スピードを落として早歩きになった凛。
猫の声も聞こえることはなく、とりあえず引き返そうかと考えていたとき
――にぎゃあああ!!
まるで猫の悲鳴のような鳴き声がかなり近くで聞こえた。
はじかれるように走り出した凛。聞こえたであろう路地に急いで向かうとそこにいたのは凛よりもかなり大きい体の男が三人と彼らに囲まれうずくまっている子猫が一匹。
とっさに隠れた凜の足は震えていた。猫は助けたい、だが、自分に何ができるだろうか、もし襲われたら……そう思うと凛は躊躇してしまう。
――にぎゃああ!!!!
鈍い音とともにまた猫の悲鳴のような声が聞こえた。
思わず飛び出した凛。
「やめて! なんでねこちゃんをいじめるにゃ!」
気づけば口に出していた。
「ああ? なんだてめぇ。女が何口出してん
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