254部分:第三十六話 四つ目の戦場その一
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第三十六話 四つ目の戦場その一
四つ目の戦場
まずはトラキアにミシェイルが帰還した。彼は程なくしてアーレスの宮殿にあるエリスの間に招かれた。そこには既に同僚である八大公達が集まっていた。
「よくぞ戻った、ミシェイルよ」
「はい」
まずは片膝をつきそのうえで頭を垂れている。他の八大公達の中に入り。
「御苦労であった」
「多くの同志達を失ってしまいました」
だがその労いの言葉に対してはこう返すミシェイルだった。
「申し訳ありません」
「よいのだ」
しかしエリスはそれをよいとするのだった。
「それはな」
「よいといいますと」
「御前達が気にしなくてもいいことだ」
ミシェイルだけではなく八大公全員への言葉だった。
「これはな。そういうことだ」
「左様ですか」
「御前達はよくやってくれている」
エリスの言葉は続く。
「それによりまた一つ我等の目的に近付いた」
「有り難き御言葉」
「あそこで御前を下がらせたのもその一環なのだ」
今度はミシェイルに向けた言葉だった。彼女はあくまで狂闘士達に対しては鷹揚であり公平な態度を崩さない。しかも声は血塗られた色ではあったが穏やかなままだった。
「それはな」
「そうだったのですか」
「御前の相手は既に決めておいた」
話は中国におけるものそのままになってもいた。
「それは安心しておくのだ。よいな」
「はい、それではそのように」
「今は身体を休めよ」
エリスはまたミシェイルに対して労いの言葉をかけた。
「よいな」
「はい、それではそのように」
こうしてミシェイルとの話は終わった。しかしエリスの話はこれで終わりではなくあらためて八大公全員に対して声をかけるのであった。
「それでだ。まずは中国での戦いも終わった」
「はい、それは」
「これで三つ目の戦いがです」
「そして次は」
「四つ目の戦いだ」
話はそこに及ぶのだった。その四つ目の戦いに。
「それだがな」
「はい、それです」
「場所は一体」
八大公達はそれぞれエリスに問う。エリスはその彼等の問いに答えこう述べたのだった。
「メソポタミアだ」
「メソポタミアですか」
「今はイラクと呼ばれるあの国だ」
その国だと今彼等に話すのだった。
「あの国に向かってもらう」
「そうですか。あの国に」
「我等もよく知るあの場所に」
ここで彼等はこうしたことも言うのだった。
かつてギリシア時代にはギリシア人達はメソポタミアにも行くことがあった。アレクサンドロス大王の時代はそこも勢力圏内だった。そしてローマ帝国時代はこの地で宿敵ペルシアと長きに渡って戦ってきていた。だが彼等にとってはそれだけではないのである。
「我等の故郷の一つとも
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