百七 鬼が出るか蛇が出るか
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こう側に黒白の蝶の姿が垣間見えた。背後にいた蝶に迂闊にも触れてしまい、爆発を食らったのだ。
身体を穿った正体である黒白の蝶を苦々しげに睨むシズクの顔が、己の死への恐怖に歪んだ。
「―――なぁんてね」
瞬間、恐怖に彩られていた顔に悪戯っぽい笑みを浮かべる。顔の端からどろりと溶けていったかと思うと、シズクの身体はバシャッと音を立てて地面に落ちた。
「【忍法・水変わり身】」
人の形をかたどっていたシズクの身体がどろりと溶け、地に残ったのは水たまり。
攻撃を受けた瞬間、自身を液体に変えたシズクは水たまりの姿のまま、地面を這った。
「詰めが甘いんだよ、ボクちゃん。ウチは身体の一部を自在に液化出来るのさ」
(……甘いのはどちらだろうな)
実際、ナルトが注意を促さなければ、シズクは蝶の接近に気づかずに死んでいただろう。蝶には、シズクが【水襲・剛流豪雨】の印を結んだ時点で、対象に着弾すると自動的に爆発するよう仕組んでおいた。
相手を殺す事が目的ではないナルトは一声かける事でシズクの死を防いだのだ。
「どんなにボクちゃんが強くとも、どうせこの世は終わりなんだよ〜」
もうすぐ【魍魎】が世界を破滅させる。【魍魎】の力を盲信しているシズクに、ナルトは静かに「…それはどうだろうな」と呟いた。
刹那、水たまりと化したシズクにさざ波が立つ。
水たまりの状態で身震いしたシズクは、己を見下ろす青の双眸に、畏怖を覚えた。
【魍魎】を前にした時以上のナニカを感じて、シズクは恐怖心を必死に押し殺し、小馬鹿にした物言いで嗤う。
「そ、それよりいいの〜?ボクちゃんが守ってる巫女の心配しなくて…」
「君の役目は俺を巫女から引き離す事だろう?」
図星を指され、シズクはぐっと口を噤む。
シズクの役割は、標的である紫苑を背負う白の許へ、クスナ本人を行かせる事。つまり、セツナ同様、自身は足止め兼おとりだ。
「それが解ってるのに、こんな悠長にしていいわけ?」と当然の疑問を口にするシズクに、ナルトは「俺も、君と同じなのでね」と不敵に微笑んだ。
直後、白煙が立ち上る。ナルトがいた場所に残る煙を、シズクは水たまりのまま呆然と仰いだ。
今まで自分と対峙していたのが【影分身】だった事実にようやく思い当って、歯噛みする。ナルト自身も結局はシズクと同じく、おとり兼足止めであったと知って、シズクは、悔しいと思うと同時に感服した。
そうして黄泉、否、【魍魎】に従う自分自身への疑問を心中に生じさせたシズクは、己を葛藤させる事自体がナルトの思惑だとは露も気づけなかった。
ガサガサと草むらを掻き分
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