第6部 贖罪の炎宝石
第3章 病
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スタは顔を伏せた。
ウルキオラには全く理解できなかった。
ひっく、ひっくとシエスタがしゃっくりを上げる声が聞こえてくる。
泣いているのだろうか?
ウルキオラがどうしたものかと考えていると、シエスタはいきなり立ち上がった。
「どうした?」
「かといって……」
ウルキオラはシエスタが何を言わんとしているのか疑問に思った。
「わたしも捨てたもんじゃありませんけど」
「どういう意味だ」
シエスタはくるりと振り向いた。
「ミス・ヴァリエールより、むむむ、胸は確実に勝ってますわ。ひっく」
「確かにな」
ぷるぷると怒りで震えながら、シエスタは言葉をつづけた。
「なな、なーにが貴族ですか。わたしなんてメイドですわ。めいど。ういっく」
「知っている」
シエスタは何度も、ひっく、ウイック、としゃっくりをかました。
ウルキオラはそこで、シエスタの様子に気が付いた。
「お前…まさか酒を飲んだのか?」
「夕食に一本付いたんです。長旅お疲れさまとか言って。ひっく」
顔が赤いのは照れているだけでなく、酒が入っていたせいらしい。
ウルキオラは思わず口をあけた。
酔ったシエスタは初めてである。
なるほどここではシエスタも、付き添いのメイドとはい客だ。
もてなすためには、この城の召使はシエスタに酒を出したらしい。
酔っぱらったシエスタはガサゴソと、シャツの隙間からワインの瓶を取り出した。
「どこから持ってきた?」
シエスタはウルキオラに顔を近づけた。
「もらったのれす」
「そうか」
シエスタは、コルクを抜くと直接ぐびっと酒を煽った。
その飲みっぷりにウルキオラは少し驚いた。
ぷは、とシエスタは瓶から口を離した。
その顔がさらにとろみを増している。
「おいウルキオラ」
とうとう呼び捨てである。
「なんだ?」
「お前も飲め」
「……ああ」
恐らく断ったらさらに面倒なことになるだろう。
ウルキオラはワインを受け取った。
ぐいっとひと口飲み込んだ瞬間、思わず怪訝な顔をした。
ワインではないのだ。
非常に強い酒であった。
「ワインじゃないな?」
「厨房のテーブルにあったのれす」
どうやらシエスタは、一本つけられたワインを飲み干して気分がよくなってしまい、テーブルの上にあった酒を適当に失敬してきたらしい。
なんとも酒癖の悪いシエスタであった。
意外な一面である。
「盗んだのか?」
「こらウルキオラ」
「……」
思わず口を閉じる。
「とにかく飲め」
「……」
断ったら本当に面倒な予感
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