慢心
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も男も見たこともない陣を形成しながら、おどろおどろしい殺気をぶつけてくる淀みの姿を。
『ど、どでかい魔力反応確認!』
「霊器は消滅の一途を辿ってるのに……まさか、道連れ覚悟に"宝具"を使うつもりなの――!?」
宝具。その言葉を聞いただけではそれがなにかはわからないが、突き刺さる恐ろしいまでに研ぎ澄まされた殺気とますます上昇していく魔力を見ればすぐにわかる。あれは食らっては不味いものだ。もし食らおうものなら、どう運が良かったとしても――
――死ぬ。
「ッ!」
吐き気と頭が死による混乱でぐるぐるとしていてまともな思考へと至ることができない。だから陣を投影し、最も早く発動できる術を選択したのは僕ではなかったのかもしれない。
イリヤスフィールは未だに状況を飲み込めずあたふたとして錯乱している、カレイドステッキとやらが全力で防壁を張ろうとしているようだからもし発動されれば彼女は助かるかもしれない。ついでにあやかるように遠坂凛も無事に済むだろう。
では僕は? 恐らく、今の器の僕では防壁魔術を発動しても、威力が足りずに耐えきれない。防ぐ時間は数秒が限度だろうし、ほとんど意味を成さないだろう。
時間稼ぎ、それが今の僕に残された唯一の選択肢だった。
「『迸れ!』【ライトニング】!」
手をかざした先に浮かび上がった陣から雷光が走る。生前の男が最も得意としていた雷魔術だからこそできる詠唱の簡略化、十全な威力にできるほど僕は経験を積んではないから威力も簡略した分軽減されているが、今はあの淀みの手を止めることが出来れば十分だ。
『――――ッ!』
雷は見事に淀みの不気味なバイザーに命中しバイザーは砕かれ、陣の形成もそれに合わせて一瞬ではあるが止まった。しかしそれだけでいい、それだけあればあの炎をもう一発食らわせることができる。それで本当に止めを差す。今度こそ木っ端微塵、いや塵も残さない!
「『灼熱の軌跡を持って――――』」
刹那、バイザーに隠された淀みの目が開かれた。瞳には長方形が刻まれていて、それが魔術的何かであることは一目瞭然であった。そして、僕はそれに捉えられてしまったということも。
気づいたときにはもう遅かった。体が、完全に静止してしまっている。石にされてしまったかのようにもがくことも許されないその状況にあるにも関わらず、淀みは再び陣の形成も始め。そして、それを終えた。
「ダメ、逃げてッ!」
出来たら、そんなこと出来ているのならそんなのとっくの昔にやっているさ。
だがしかし、考えてみればこれはある意味不幸中の幸いだろう。淀みは完全に僕の方へと狙いを定めた。それはつまり、イリヤスフィールへの被害が軽減できると言うことだ。
『【騎英の……―
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