246部分:第三十四話 氷と毒その六
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第三十四話 氷と毒その六
「薔薇は砕けた。貴様に残されたのはだ」
「拳だけだと仰るのですね」
「そうだ。違うか」
まるでその拳を見たいかのような言葉であった。
「既に薔薇は防いだ。それともまだ薔薇があるというのか?」
「いえ」
しかしアフロディーテはその問いには首を振ることなく静かに述べて返すのだった。
「これで終わりです」
「紅、黒、そして白の三つの薔薇でか」
「その通りです。これで終わりです」
彼はまた述べるのだった。
「これで」
「そうか。ならば拳だけだな」
ミシェイルはそこまで聞いて確信したのだった。
「最早貴様は」
「いえ、まだです」
だが彼はそれもまた否定するのだった。
「私には拳よりも強い切り札がありましてね」
「切り札だと?」
「そうです。このピスケスのアフロディーテ最大最後の技」
こう言ってきた。
「それがまだあります」
「ではそれを今ここで見せるというのか」
ミシェイルは何時しかその吹雪を止めていた。そうしてそのうえでの言葉だった。アフロディーテもまたその薔薇を止め両者は攻防を中止していた。
「私に対して」
「必要とあらば」
カードを切ろうとしたそこで止めてきていた。
「お見せしますが」
「ならば見せてもらおうか」
ミシェイルはあえてカードを見させようとしてきた。この辺りは慎重にそれぞれカードを切ろうとして駆け引きを行っているのだった。
「貴様のその技をな」
「では今から」
「しかしだ。それならばだ」
ミシェイルもまたここでカードを見せようとしてきた。
「私もまた見せる必要があるのかもな」
「貴方も?」
「そうだ。私もまだ技はある」
彼は次第にカードを懐から出してきていた。
「このアスタロトのミシェイル最後の技をな」
「そして最大であると」
「その通りだ。必要とあらば見せる」
彼はまた言う。
「どうだ。見たいか」
「貴方が出すならば私も」
駆け引きはいよいよ静かにだが激しくなってきていた。そうしてその中で探り合いそのうえでお互いに勝とうとしているのだった。
「出しますが」
「面白い。ならばその技に勝利を収めた方が生き残る」
「その通りです」
「言った筈だが」
ミシェイルの言葉は氷の刃になった。
「私はアーレス様に貴様等の首を捧げるつもりだ」
「私もまたアテナに平和を捧げる身」
互いの仕える神も話に出された。
「それではいよいよ」
「決着をつけるとするか」
二人の小宇宙がまた激しくなってきていた。両者は互いに隙を窺い合いそのうえで決着をつけようとしていた。武漢での闘いは最後になろうとしていた。
第三十四話 完
2009・5・23
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