242部分:第三十四話 氷と毒その二
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第三十四話 氷と毒その二
「貴方の毒の霧。私に効くでしょうか」
「効かないというのか?」
「では勝負になりますね」
彼は紅と黒の薔薇の中にその身を置いていた。
「貴方の毒と私の毒。どちらがより強いのか」
「それならもう決まっている」
ミシェイルは冷酷なまでに静かな声を出してきたのだった。
「このミシェイルが勝つ。アスタロトのな」
「アスタロト。そういえばです」
ここで彼はふと言うのだった。
「かつてはイシュタルでしたね。バビロニアの女神の」
「そういうことになっているな。アスタロトはかつては女神だった」
このことは彼も知っているのだった。
「バビロニアの美の女神イシュタル。このアスタロトの前身はそうとされている」
「ベルゼブブ然りベール然り」
これまで戦場に出て来た八大公の名前もアフロディーテの口から出される。
「貴方達はかつては神でありましたね」
「そういうこともあったかも知れない。しかしだ」
ミシェイルは自らの口から言うのだった。
「今は我々は完全な魔神だ。アーレス様にお仕えするな」
「戦いに心を奪われてしまったようですね」
「最早それを消すことはしない」
戦いの魅力に心を奪われ魔神になった、そういうことだった。だからこそ彼等は今はアーレスの下におり戦いを楽しんでいるのである。
「さあピスケスよ話は終わりだ」
黒い毒霧がさらに濃くなってきた。
「これで死ぬのだ。私の毒の中でな」
「イシュタルは美の女神」
だがここで彼はまた言うのだった。
「美の。しかし私もまた美を重んじます」
「美をか」
「そうです。美は必ず裏切らないもの」
彼はこのことを述べてきた。
「私はその為に敗れることはありません」
「つまり貴様が勝つということか」
「そうです。この世で最も美しいもの。それは」
「それは?」
「アテナの御心です」
それだというのだ。彼は。
「それを心に持っている私が敗れることはないのです」
「ではそれを今はっきりさせよう」
ミシェイルもこの言葉を受けて退くことはなかった。
「どちらがより美しいのかな」
「いいでしょう。それでは」
「受けるがいい」
毒の霧と薔薇の毒がそれぞれぶつかり合う。まずは薔薇の花びら達が毒の霧に触れ次々としおれ消えていくのであった。
「どうやら私の霧の方が上だな」
ミシェイルはその消えていく薔薇達を見てほくそ笑んできた。
「既に勝負はあったか」
「さて、それはどうでしょうか」
だがアフロディーテは自分の薔薇たちがしおれ消えていってもその自信を変えない。
「まだわかりませんよ」
「戯言を。既に貴様の薔薇達は現にこうして消えていっている」
ミシェイルはそれをあえて指摘してみせる。
「これが貴様の敗北
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