暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
第百十六話
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
って来ていた。

「前菜も終わったところで……メインディッシュの時間だ。天才少女様の実験だか何だか知らないが、ウザいんだよ、この世界でそんなことよ」

「ッ――く、来るなら来なさいよ! 何かしようとした瞬間、牢獄送りにしてやるし、あんたらにやられた仲間がすぐに助けに来てくれるわよ!」

 もったいぶりながら拳法家風の男が近づく最中、再びセブンの耳元にそう呟かれた。それに負けじと怒鳴り返してはみたものの、誰がどう聞いてもやせ我慢にしか聞こえないのは、セブン本人にも分かっていた。このリーダー格らしい男の目をすり抜けて、牢獄送りにするボタンを押せるとは思えないし、仲間たちのリメインライトは消えていない為に彼らの意識はまだそこにある。仮に死に戻りしたしても、シャムロックの本部からここまでに時間がかかりすぎる。

「それに本隊は《黒の剣士》どもと戦ってる。アイツらにはまた別の機会だな、おい」

「……お姉ちゃん……」

 《黒の剣士》――というのは、セブンには分からなかったが、シャムロックの本隊たるスメラギたちも、この状況で助けに来るのは望めない。気丈に振る舞って敵を睨みつけていたセブンだったが、プレイヤーキラーたちは誰もそれに構うことはなく。無意識にセブンの口から零れ落ちた一言に――拳法家のようなプレイヤーキラーは、一瞬でその身を切り刻まれていた。

「え?」

「……あ?」

 奇しくもセブンとリーダー格の男の声が重なり、まるでプレイヤーキラーの墓標であるかのように、リメインライトには幾つもの剣が突き刺さっていた。そのいずれもがよくメンテナンスされた名刀であり、その突如として発生した剣へのどよめきは――『彼女』の叫びに全てかき消された。

「その子に手を出すなぁぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!」


 レイン――枳殻虹架の最初の記憶は、妹を守れなかった記憶だった。天才児だった妹はロシアの研究所へ、凡庸だった虹架は日本の学校へ別れることになり、離れたくないとせがむ妹を守ることは出来なかった。

 母の願い通りに平凡な少女として成長していった虹架は、いつしか歌手になることを夢見ていた。平凡なりに真剣に考えた夢を叶えようと、日夜、自分なりに特訓を重ねていた。

 ただし別れた妹は――もはや、自分の手の届かないところにいた。世界的なアイドルとなったかと思えば、研究者としても妹は成功していて、正直に嫉妬もした。特に、自らも志した歌の分野で、既に成功している妹の姿に。

 そして妹に対する何の対抗心か、まだ妹が手を出していなかった、VR世界ことSAOに足を踏み入れ――何とかこの現実世界に帰還した虹架を待っていたのは、VR空間の研究者として有名になっていた、妹の姿だった。

 それでもSAOの体験からVR空間に魅せられていた虹架
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ