深淵-アビス-part2/奈落の底
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なく、シュウを実験にかけている最中に、何か良からぬことが起きたことだけは理解したが、一体何が起きた?
「…奴らもまた、同じってことね」
皮肉を込めながらシェフィールドは呟いた。
いや、たとえ今の自分たちの行いが失敗したとしても、どのみち自分たちが最後に笑うのだ。なぜなら…
(私には『あの方々』かいるのだからね)
一方…。
窓一つない、ある施設の暗がりの廊下の中。そこで、メンヌヴィルに連れさらわれたシュウを奪還すべく、アスカが暗闇の中を突き進んでいた。
「くっそぉ、やっぱここにはいないか」
奴が発生させた空間の歪みの中へ飛び込んだ後、彼はいつの間にかここに転移されていた。そこにメンヌヴィルもシュウもいなかった。すでに移動したのか、それとも違う場所に自分が転移したのか、なんにせよここから移動して彼を探さなければ。
アスカは、まだ会って間もないが、シュウが少なくとも戦士としてはまだ未熟な面があると見切っていた。それは主に実力というよりも…精神面。一見心が強そうに見える彼だが、少し触れただけでも粉々になる壊れかけのガラスのような脆さがあると見た。未熟さゆえの脆さ、という点に置いては自分も覚えがある。同じウルトラマン同士である、ということもあるが、どうも放っておけないのだ。放っておけば、あいつが危なっかしさばかりを押し出し、どこかで身を滅ぼすことになる。そうなっては、ティファニアたちも嘆き悲しむに違いない。まだあいつのことをよく知らないが、だからこそ知らなければならない。なぜあいつが、あそこまで自分の体に、まるで自分自身を虐待するように鞭を打つのか。
「待ってろよ…!」
アスカは手に、かつて自分の世界の防衛チーム『スーパーGUTS』に所属していた頃から所持している銃『ガッツブラスター』を構えながら移動する。
突き当たりの廊下に明かりが灯っている。誰かがいるようだが…アスカは見つからないように、角から突き当たりの廊下を観察する。視線の先に、こちらにやってくる兵の姿が目に入った。あの黒っぽい鎧は、確かアルビオン兵か?シュウたちと会った大陸の兵たちがちょうどあの鎧を着ていたのを覚えていたアスカはそう思った。となると、ここはアルビオンなのか?いや、あのメンヌヴィルという男が、マチルダたちから聞いていた、ウエストウッド村を怪獣に襲わせテファをさらおうとした『シェフィールド』とかいう女と関係があると考えると、奴がこの国へシュウを連れ戻したことも納得できる。
視線の先の兵士が、こちらに近づいてくる。まずい、このままではあの兵士に見つかってしまう。どうする…。
「…いや、待てよ…?」
少しピンチに陥ったアスカだが、すぐに逆転の手を思いついた。どういうつもりか、彼は逃げようとしなくなり、そのまま兵士が来るのを待ち始めた。例の兵士が、
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