187話 都に潜む者達
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正宗の内命を受けた凪と真悠(司馬季達)は洛陽に潜入していた。二人はそれぞれの部隊を率いて各々の任務遂行のために情報収集を行っていた。
潜入から二週間後、凪と真悠は夜陰に紛れて荒れ果てた屋敷に姿を現していた。屋敷には人気がない。この屋敷の主は賈?に粛正された百官の一人である。彼の家族は皆殺しにされ屋敷で働く使用人は災禍を避けるために逃げ出していた。屋敷の彼方此方に当時の凄惨さを物語る乾き黒ずんだ血痕の後が月明かりに照らされていた。
「凪、待たせてしまってごめんなさい」
真悠は側近の王克と二人の共を伴っていた。彼女に声を掛けられた凪は気分を害した様子はない。
「私が早く来ただけです。真悠さん、気にしないでください」
凪は真面目な顔で真悠に即答した。彼女の言葉は事実だった。凪は二刻(三十分)前にこの場所に来ていた。彼女は補佐役の水蓮(夏侯蘭)と二名の共を連れていた。この場にいる者達の服装は近代の軍服を彷彿させるものだった。ただ服装の色調は黒一色であった。
「凪、定時連絡をはじめましょう。私からでいい?」
「構いません。どうぞ」
真悠は凪から了解を得ると報告をはじめた。
「皇帝陛下(劉協)と弘農王(劉弁)の所在は確認できた。皇帝陛下は言うまでもなく宮中。弘農王は賈文和に軟禁されている。軟禁場所は董仲穎屋敷と思われる。凪、質問はある?」
真悠は劉協と劉弁保護が任務であるため、二人の居場所についての調査結果を報告した。ただし、劉弁については歯切れの悪い言い方だった。
「私は董仲穎の屋敷を内偵していますが弘農王の姿を確認できていません。その話は本当なのでしょうか?」
凪は真悠を訝しむように質問した。
「弘農王の居場所ははっきりいって分からない。これは私の憶測によるものよ」
「憶測をわざわざ報告されたのですか?」
凪はいい加減な情報を上げてきた真悠に不満を抱いていた。
「憶測だけど信憑性のある情報を元に導き出した結論よ」
真悠は凪を宥めるように言葉を継いだ。
「宮中内にいる郎官から情報を得たことが切欠。賈文和は義兄上を強襲した翌日に弘農王の身柄を宮中から董仲穎の屋敷に移した」
「その郎官からの情報は信用できるのですか?」
凪は宮中に仕える郎官からの情報であると聞き、その情報を元に導き出した推論を疑わしいと思っているようだった。真悠も凪の疑問は折り込み済みなのか話を続けた。
「裏は取っている。保身に走っている宦官を何人か抱き込んで情報を引き出したから間違いない。でも、凪の言う通り董仲穎の屋敷には弘農王の姿が見えない。そして、洛陽から連れ出した形跡はない」
「真逆、弘農王は死んでいるのでは無いでしょうね」
凪は慌てた様子で真悠に
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