187話 都に潜む者達
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うに笑った。
「真悠様、お言葉にはお気をつけください」
「お前も分かっているだろう。長沙劉氏の傍流の傍流の栄華はもう終わりだ。家臣に地位を脅かされる傀儡の皇帝など不要。これよりは高祖の孫である斉王家の裔である義兄上の時代が来るのだ。この瞬間に立ち会えることは私にとって名誉なことだ」
真悠は「司馬氏にとって」と言わず「私にとって」と言った。彼女は正宗の姻戚である司馬氏一族としてでは無く、彼女個人として正宗の家臣であることを喜んでいた。
「真悠様、劉車騎将軍の信頼を得たいのであれば、まずは此度の任務を全うしなければなりません」
王克は気持ち高ぶる真悠をたしなめるように言った。すると真悠は王克を冷めた目で見た。
「そんなことお前に言われずとも分かっている」
「出過ぎたことを言い申し訳ございませんでした」
王克は真悠に謝罪した。興が冷めた真悠はそそくさと帰路に着いた。地を照らすのは月明かりのみ。真悠達が去った人気の無い場所には虫の鳴き声のみが鳴り響いた。
正宗の配下が密かに洛陽で暗躍する中、董卓陣営は慌ただしく戦支度を進めていた。
空に日が昇る頃、董卓は輿に乗り宮中に足を運んでいた。彼女の目的は皇帝・劉協への目通りだった。
劉協は董卓を避けていた。最近は宮中の奥に籠もることが多く、時々姿を現しては庭園で一人黄昏れることが多かった。賈?が兄・劉弁の身を宮中から董卓屋敷に移動したことで、劉協は兄の安否を気遣い不安な毎日を送っていた。
董卓が宮中に参内した頃、劉協は宦官を伴い庭園に足を運んでいた。彼女が石製の椅子に一人腰をかけ佇んでいると彼女に声をかける者が現れた。
「皇帝陛下、董仲穎にございます」
劉協は物静かなに声をかけてきた董卓に対して何も反応しなかった。董卓のことなど眼中にない。劉協はただ庭園の草花を見つめていた。
「皇帝陛下、董仲穎にございます」
「何度も言わずとも聞こえている」
劉協は董卓に背を向けたまま感情の籠もらない声で答えた。その声音から劉協の気持ちが伝わり董卓は哀しい表情を浮かべ沈黙していた。董卓は賈?が董卓側の都合で劉弁の軟禁場所を董卓屋敷に変更したことを知っていた。これは賈?が献策によって行われたことだが最終的な決断は董卓が下した。その所為で董卓と劉協の間には深い溝ができていた。
劉協と董卓はしばし会話を交えず沈黙したままだった。両者の静寂を破ったのは董卓だった。
「この度のことお詫びいたします。賈文和の不始末は私が負う所存です。もうしばらく不自由をおかけしますがお許しください」
董卓は意を決したのか凜とした声だった。その声に劉協は反応しなかった。
「全ては私董仲穎の責任です。もうしばらく不自由をおかけしますがお許しくださ
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