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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十八話 陰謀家達
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おのれリューネブルク、汚いぞ、少しくらいは庇ってくれてもいいだろう。確かにお前の言ったとおりだ。だがお前もその後、“それが良いでしょう。彼女に演技は出来ません”そう言ったじゃないか。

全くリューネブルクといい、シェーンコップといい地上戦をやる奴は碌でもない連中ばかりだ。強かで狡猾で逃げ足が速い、おかげで要領の悪い俺が犠牲者になる。

リューネブルク、俺はお前が彼女を“演技が出来ない”と評した事は黙っていたぞ。命を救われた借りがあるからな。お前も少しは俺を見習え、この律儀さと人としての可愛げを。

俺に与えられた罰は書類だった。昨日一日、宇宙艦隊司令部はまるで仕事にならなかったそうだ。おかげで事務作業が停滞、決裁書類が山のように溜まっている。

皆は今日の分の書類を、俺は昨日の分と今日の分の書類を片付ける。まあそれは良い、俺は書類仕事は嫌いじゃない。だからヴァレリー、俺を睨むように見るのは止めてくれないか、今ひとつ仕事に集中できないだろう。それは副官の仕事じゃないぞ。

俺を困らせた問題は他にもあった。ユスティーナがワンワン泣きながらTV電話をかけてきたのだ。どうも俺が姿を現すまで何度か司令部に電話したのだが、そのたびに素っ気無くあしらわれたらしい。

あしらったほうも何も知らなかったのだから仕方ないと言えば言える。おかげで俺はヴァレリーに怒られながらユスティーナを宥めるという前門の虎に後門の狼といった状況になった。どいつもこいつも俺を困らせる事しかしない。フェルナー、お前の所為だ。いつか、たっぷりと仕返ししてやる。

そんな事を考えていると俺の前に無言で立った男が居た、アイゼナッハだ。黙って決裁書類を俺に差し出してくる。出撃前に補給を完全にしておきたいという事らしい。俺は無言でサインして決裁書類をアイゼナッハに返した。

アイゼナッハは今度は俺の席にあるメモ用紙に何かを書くと俺に差し出した。“補給は至急、最優先で”。俺はメモ用紙に“補給終了後はこのメモ用紙は必ず焼却する事”と書いてからサインしてアイゼナッハに返した。彼は嬉しそうに頷くと敬礼して帰って行った。

アイゼナッハは喋らない。その所為で補給等どうしても後回しにされ易い所がある。まあ昔も今も声の大きい奴のほうが注目されるし、怒らせたら拙いとか思われる。その分の皺寄せがアイゼナッハに行くのだ。

それであのメモ用紙が生きてくる。決裁文書にあれを添付して兵站統括部に回すのだ。これでアイゼナッハに皺寄せが行く事が無くなった。でもなあ、たまには喋れよ、俺は未だあの男が喋ったところを見たことも声を聞いたことも無いんだが……。

書類の決裁を続けているとキスリングが来た。早速応接室で話をするべく移動した。ヴァレリーに睨まれながら仕事をするのは御免だ。椅子に腰掛
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