第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#1
STRENGTH 〜The Cyclops〜
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やがてそれぞれの撃ち放った流法と流式が同時に弾け飛び、
その余波が波間を大きく蠢かし帆船を揺らす。
「うおぉぉッッ!?」
甲板上に固定されたフィッシング・チェアーから
ジョセフが頓狂な声をあげて転げ落ちた。
花京院がそちらに意識を向けた一瞬の間に、
海上での熾烈なる戦いは決着が付いていた。
「……」
「……」
承太郎の操るスタンドの右拳が、シャナの握る大太刀の切っ先が、
互いの左胸に、触れるか触れないかギリギリの位置でそれぞれ停止している。
全力で撃ち放った能力が相殺しても、
余波に怯まずいち早く相手に攻撃を仕掛けようとした結末。
ゼロコンマ数秒以下の中でどちらの攻撃が先に届いたかというのは愚問に等しく、
この勝負の帰趨は海面に佇む二人にとって明らか。
「これで……」
「37戦、37引き分け、ね」
短くそう呟きどちらからともなく己のスタンドと白刃を相手の致命点から引く。
「やれやれ、ようやく終わったか」
いつのまにか花京院の傍に来ていたジョセフが、
老齢の割りに逞しく鍛え上げられた右腕を大きく振る。
「おお〜い!! 二人共ぉ〜!!
それくらいでそろそろ休憩したらどうじゃあ〜!!
食事にしよう〜!!」
遠間から届く耳慣れた声に、
二人は海原を蹴り火の粉を舞い散らして甲板へと向かってきた。
「シャナ、オメーよ。大刀峰に返さなくていいぜ。
剥き身じゃねーといまいち緊張感がでねぇ」
「うるさいうるさいうるさい。
だったらおまえも首から上狙ってきなさいよ。
拳だって本気で握ってないでしょう」
波を被った為、微かに汐の香りを漂わせながら
承太郎、シャナの二人は甲板にあがるなり殺伐とした言葉を交じわせた。
「兎に角、昼食が済んだらもう一度やるわよ。
負けた方が、勝った方の言うコトなんでも一回聞く」
「オレにメリットは無さそうな条件だがな。
ま、勝ったら肩でも揉んでもらおうか」
「せいぜい今の内に言ってなさい。後で泣いてもしらないから」
戦闘終了後にも関わらず、
埋み火のように好戦的な表情のまま船内の食堂へと赴く両者。
そこに。
「ダメだ」
突如荘厳な男の声が、有無を云わさぬ口調でシャナの胸元からあがった。
「アラストール?」
炎の深紅から元の黒髪に戻った少女が、
漆黒の球に二つのリングが絡んだペンダントに問う。
「シャナ、ここのところ空条 承太郎との模擬戦に時間を割き過ぎだ。
実戦の勘を研ぎ澄ますのも悪くはないが、基本を疎かにしては成長は覚束ぬ」
「あ、う、うん……でも、」
己の箴言に殆ど逆らう事のない少女が、
反論というわけではないが僅かに口を籠もらせた。
まるで夢中になっている遊戯を、親に窘められた子供のよ
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