第十五話 衰える身体その七
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「扉のない壁だ」
「そうであるが故にですね」
「王にも司教にもどうしようもありませんね」
「マリー王女ご自身が動かれても」
「それでもですね」
「妃は頑なだ」
その心がというのだ。
「あまりにも頑なな為にだ」
「どなたのお言葉も聞かれぬ」
「それこそですね」
「そしてそれが為にですね」
「誰が何を言われようとも」
「マリー様には会われませぬか」
「そうなるとしか思えぬ」
太子の目から見てだ。
「妃はあまりにも頑なだ」
「あそこまで頑なな方も珍しいね」
「我々もそう思います」
「あの方を見ていますと」
「全くだ」
太子も頷いて言う。
「人の話を聞くことも大事だ」
「特に君主ともなれば」
「そうあるべきですね」
「人の話を聞いてだ」
そしてというのだ。
「善悪、正邪もだ」
「聞き分けることですね」
「そうして断を下す」
「そうあるべきですね」
「最初ら断ってはだ」
それではというのだ。
「何もならない、だからな」
「お妃様は、ですね」
「あの様な態度ではよくありませんね」
「マリー様とお会いしようとしない」
「あの頑なさは」
「どうしたものか、あれでは女王になってもだ」
太子も彼女をこの国のこの座に就けようとしている、そのことを目指しているがそれでもというのである。
「よくはない」
「あくまで頑なな」
「鉄の女王ですね」
「そうなってしまわれますね」
「強い意志はいい」
太子はこのことは否定しなかった。
「むしろそうあるべきだ、しかし」
「それでもですね」
「マイラ様の様な頑なさはですね」
「よくありませんね」
「あの様なものは」
「后は自分の心に壁を作っているのだ」
それがマイラの鉄だというのだ。
「自分の中に閉じ篭っている、あれではだ」
「王になられても」
「それでもですね」
「よき王とはならない」
「そうなのですね」
「そうだ、だから私は妃にマリー王女と会うことを望んでいる」
彼もまた、というのだ。
「その様にな、しかし」
「マイラ様はあくまで頑なで」
「王も司教も言われていますが」
「それでもですね」
「頑ななままですね」
「あの壁を取り除くことか」
太子は深刻かつ真剣な面持ちで述べた。
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