点と線
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
砕け散った。
「――術式を解放する」
自然と言葉が溢れ出た。
四つ折りの紙に引かれた陣が閃光に輝く。その光と違和感に遠坂凛が気づいてこちらを振り向く、なるほど見返り美人だ。その目には疑問と驚愕の二つが浮かんでいて、彼女がこの状況を受け入れきれていないことを表していた。
いや、それでいい。その間にこれを済ませなければ僕はイリヤスフィールのようには進めないのだから。果てより流れる雲のように、彼方から来る風のように、どこまででもやってくるその言葉を並べていく。
「紡ぎしは蘇生、訪れぬ終焉、永劫たりえる光の奇跡に名を与え、今希望を宿せ――!」
「【レイズデッド】」
ある世界に、男がいた。男は魔導を極め、頂点に立ち、その奇跡を持って多くの人々を救った。結果も過程も、男には必要のないものだった。人が救われればそれでよかった、そうして救われた人間が感謝もせずに同じことを繰り返そうになろうともまた救うだけ、善悪問答など男の知ったことではなかった。
それは一方的な救い、自己満足でありながら自分だけでは満足に気持ちよくなることもできない欠陥的な欲求。男はそれに、果てを見た。ただ一つの生涯でそれらを終わらせたくないと考えた。やがてその願いは究極の魔導となり奇跡を起こし、それを叶えた。
そして男の願いは永遠に引き継がれていく。時に獣へと、時に女性へと、そして時に僕のような人間へと。
視界を覆いつくす光を放つのは、僕を中心に広がっている紙に記された通りの陣。地面に投影されたそれは一定の速度でくるりくるりと回っており、術式として与えられた作業を淡々と行っている。
「あんた、何して――!」
「大丈夫、すぐ終わる。これは継承だから」
――なるほど、あの男の全貌はこうだったのか。度々夢に出ては楽しませ、夢に出ては悲しませ、夢に出ては怒らせた男の全てを今知覚し、記憶し、網羅した。何から何までというわけにはいかないが、これで僕はあの男同様の力を使える状態にはある、ということだ。
しかし力があってもまだ器が足り得ていない。簡単に言えば術技引き継ぎ二週目プレイの状態だ。使えはするが実用的でない状態、TPが足りないだとか他キャラとのコンボが前提であるとか、そういう状況に僕は陥っている。
まぁいい、男のいた世界とは違って闘争は少ないから器を急速に広めることはできないが、普通にするよりは断然早く伸ばせるだろう。
人を救うことに関しては、どうでもいいか。イリヤスフィールについていけば適当にそうなったことになるだろうし、三の次ぐらいだな。今は、イリヤスフィールの力になろう。
継承を表す陣が閉じられ、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ