点と線
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それでいてどこか狡猾でもある。その在り方はどこまでも人間らしくて、だからこそ彼女は強く輝いて映る。それらからよくわかることは、彼女だけは絶対に目標としてはいけないと言うことだ。
彼女を目標にしてしまっては、絶対にどこかで居もしない彼女に心を折られる日がきっと来るからだ。僕はそこまで強く在れないから、よくわかる。
つまり何が言いたいかと言うと、絶対に感謝だけは悔しいからしてやらないってことだ。
「ほら、やる気が出たならとっとと行動する! もうあんたのお守りなんて私は懲り懲りなんだからね!」
僕だってしてほしくてしてもらったわけではないし、次があっても絶対に遠坂凛にだけは頼らないと今心に誓った。
しかし動く気力を貰ったとはいえ、僕が出来ることなんて本当にたかが知れていると思う。彼女のように戦闘の経験がないから的確なアドバイスなんて出来るはずもないし、声をかけるだけでイリヤスフィールが強くなるならいくらでもしてやる所だがそれが逆に集中を切らすようなことになってこれ以上の足を引っ張ることにも繋がりかねない。
何も思い浮かばず、呆然とポケットに手を突っ込んで考えに更けようとして、ふと気づく。
あの気色の悪い感覚と、これをどうにかして繋げることが出来たなら、彼女たちの力になれることも出来るのではと。
でも、どうやって? 今それを知ったばかりの僕にどうにかすることなど、出来るはずがない。どうすること出来ない――
『言を持って理と成す』
『――Anfang(セット)』
『理を持って式と成す。式は干渉を生み、万象へと混じり爆ぜる』
『爆炎弾三連!』
そして、今まで見てきた男の姿と、その言葉。僕の中で、急速に点と線が繋がっていき、一枚の絵となり始める。
言霊という言葉がある通り、口にした言葉には力が宿っていて、巡りめぐって自分に帰ってくるらしい。魔術にもその法則が当てはまるのだとしたら、夢の彼女が言っていたことはきっとまさにその通りなのだ。
言霊は巡り理という現象へと姿を変える、現象は実証を重ねられ式として表される、そうして式が神秘として用いられた時、森羅万象と結び付き力となり現実に爆ぜる。彼女の論がそういうことだとするのならば、僕にもまだ道はある。
僕は魔術の"ま"の時も知らない。そういう家系に生まれていないし、そもそもそれとは関係のない十年間を過ごしてきた。極々普通に平凡に暮らしてきたのだ。そんな僕にあるとすれば、魔術ではなく、夢から降り落ちてきたこの陣と陣を用いた魔術的手段だけ――!
『是、魔導の基本也、です』
ならばそれを存分に使わせてもらおう。今を打開する切り札にさせてもらおう。この、魔導(・・)を――!
ひび割れる音と共に、何かが弾け、遮る壁が
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