侵略の日
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都心の上空に現れた黒く禍々しい円盤。それはかつて一世を風靡したあの映画のように、首都に絶望を振り撒いていた。
そして俺は、その円盤の内部に囚われていた。
―――円盤の内部は4畳半だった。
道端を歩いていたら突如あの、あれだ、キャトルミューティレーションされる牛のようにこの円盤に吸い上げられて、この『居住区』と呼ばれる場所に放り出された。
「…まじか」
新宿の空を覆い尽くすこの円盤の居住区が、こんなこぢんまりしてていいのか?俺が何となく所在なく周囲を見回している間、一人の割と普通な感じの男が、黒いローブっぽいのを4畳半に広げて俺を見下ろしていた。
ローブだけで部屋の面積の半分は埋め尽くしている。何故この部屋でこんなローブを着たんだ。狭さ倍増だろうが。
「ふふふははははは……どうだ、我が帝国の捕虜となった気分は」
「………えぇと」
「云ってみろ、未開の民よ!!恐怖したか、絶望したか!!」
「…うぅむ……」
「さあ、この期に及んで貴様は何を思う!?」
「……近いなぁ、と」
「……近い、だと!?貴様異星人とのファーストコンタクトの感想が『近い』ってなんだ!?」
こんなマツコデラックスみたいなでかいローブで至近距離に立たれて、他に何を思えというのだ。
「てか狭すぎませんかこの部屋」
「うるさい!捕虜にはこの部屋すら勿体ないわ」
とか毒づきながらも、俺がしきりにローブのすそを気にしていることに気が付くと、奴はローブを脱いで畳み始めた。ローブの下は意外とシンプルなツナギの制服で、居住区は少しスッキリした。
「畳むんすねぇ…」
「脱ぎっぱなしというわけにはいかんだろうが!…ったく、ここの人間の『侵略者感』を研究して用意した衣装だというのに」
少しは普通の人間より大きいのかな、と思っていたが、ローブ脱いだら本当に俺と変わらない。肌が青白い…というか微妙に青いのが、DUFT PUNKのPVみたいでちょっと笑いそうになった。
「ちょっと聞きたいのですが」
「居住区の狭さについてか!?」
あ、やっぱり気にしてたんだ。
「設計ミスだ!!…お前ら未開の民にはあずかり知らぬ事だろうがな、星間航行というのは莫大な時間と燃料を必要とするのだ。食料だって船内で作物レベルから自作だ。そして燃料タンクはブースターになっていて、少しでも推進力を得るために、空になると切り離して廃棄する。この宇宙船も相当巨大に見えるだろうが、出発時の半分の嵩になっているからな!?」
「そんならついでにもう少し大きくしちゃえばいいのに」
「黙れ!余分なスペース増やすとな、推進力がもっともっと必要になるんだよ!素人が口を出すな!!」
さっき設計ミスとか云ってなかったか?…まぁいいや。
「…で、乗務員はどれくらい居るんですか」
「30人だ」
「え!?
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