暁 〜小説投稿サイト〜
東方虚空伝
六十二話 百鬼夜荒 伍
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
よ、分かってるから」

 諏訪子は動揺をする事無く、そう軽く返した。
 逆に驚きの表情を浮かべる月詠に諏訪子は、

「此処に来る途中で、あのデュラハン?だったけ?あれに遭遇してさ……まぁ逃げられたんだけど。
 その後にあんたの部下達に会って事情は聞いたよ。
 あたしが伊勢に戻ったって指揮なんて出来ないからね、此奴の相手はあたしがしてあげるから早く戻りなよ」

 覇夜斗へ鋭い視線を送りながら、手を軽く振り月詠に対し早く行け、と合図をする。

「すまん!洩矢、この借りはいずれッ!
 ……だが気を付けろ、奴は能力で起こした現象を消す」

 月詠はそう言い残し力強く地面を蹴ると夜空へと飛び立ち、瞬く間に彼方へと飛翔して行った。

 それを気配で感じながら諏訪子は廻していた鉄輪を掴み止め覇夜斗へと問いかける。

「月詠を止めに動くかと思ったけど……随分と大人しいじゃない」

 疑問とも挑発とも取れる諏訪子の言葉に、覇夜斗は構えを解き鼻眼鏡押し上げながら不敵に笑った。

「正直に言えば止めたかったですね、当たり前の事ですが。
 でもそれを貴女が許さなかったではないですか。
 ……しかし、これだけの圧力…それに洩矢と呼ばれていましたね?
 もしや貴女は諏訪の洩矢 諏訪子様でしょうか?」

 覇夜斗の疑問に諏訪子は笑顔を浮かべ、

「その通りだよ、もしかしてわたしって熊襲でも有名なの?」

 笑いながらそう答える諏訪子に対し、覇夜斗も笑顔を見せ、

「えぇ勿論です!最古の神王にして土着神の頂点と呼ばれた貴女の事を知らぬ訳がございませんッ!
 そしてそんな貴女が今や大和の犬に成り下がり、生き恥を曝している事も重々承知していますよッ!
 その貧相な体で大和に取り入りましたか?」

 諏訪子に向け、罵倒を声高に叫ぶ。
 それは事情すら知らない無思慮な第三者の戯言である。
 当事者か事情を知っている者ならばその言葉に怒り狂ったとしても落ち度は無いだろう。
 しかし当の諏訪子は笑顔を浮かべたままで、

「ハハハッ!あんたね、挑発のつもりでも……もう少し言葉は選びなよ?
 そうじゃないと――――死ぬ時苦しくなるだけだから」

 そう笑顔を貼り付けたまま――――その瞳には刃の様に鋭い冷たさを宿していた。

「それはそれは御忠告痛み入ります。
 返礼と言ってはなんですが――――わたしが貴女のその哀れ現状に終止符を打って差し上げますよッ!」

 諏訪子の殺氣をその身に浴びてすら覇夜斗は態度を崩す事無く更に侮蔑を口にする。

 今や二人の間には形容しがたい音が響き渡っていた。
 それは見えない無数の刃がぶつかり合う様な、悲鳴にも似た、高く鋭い殺氣が(せめ)ぎ合う音。

 諏訪子の周
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ