六十二話 百鬼夜荒 伍
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消す…いや、能力で起こした現象を消すのか」
月詠の言葉に覇夜斗は表情を崩す事は無かったが、先程までの雄弁さが嘘の様に無言を貫いていた。
だが『無言は肯定の証』――――最もそれが分かった所で彼の力が脅威だという事実は変わらない。
数多在る能力の中で希少な分類に属する力がある。
それが『消去系』と括られる能力だ。
「この世界」は常に進み続けており、それは同時に何かが常に生まれ続けている、という事になる。
故に消えていくモノの方が圧倒的に少ない。
能力は「この世界」の理に沿ってしか発現せず、発生系・創成系・操作系・現象系等と比べて消去系が生まれる事が希なのは至極当然である。
そもそもの話、能力は『自分の本質の顕現』とも呼べるものだ。
「消す」等という本質が早々あるはずもない。
何故ならそれは――――生きるという事は創って行く、という事。
その当たり前の事と相反してしまうのだから。
覇夜斗は無言のまま再び月詠へと躍り掛かるが――――
夜闇の中を何かが鋭く空気を裂きながら覇夜斗へと襲い掛かる。
淡い月光を反射する三つの鉄の輪が、高速で回転をし獰猛な獣の様に獲物に向け殺到するが、彼は巧みに鋭く槍を三閃させ全て弾き返す。
打ち払われた鉄輪は勢いが落ちたものの、地面へと落下する事無く天上へと翔けて行く。
そして何時の間にかそこに居た創造主の元へと戻り彼女の周囲に滞空する。
「虚空にお使い頼まれただけなのに……なんか厄介事に遭遇しちゃったよ」
諏訪子は月詠の元に降り立ちながらそんな台詞を吐く。
「洩矢ッ!何故此処に?」
驚きと当然の様に浮かぶ疑問を投げかける月詠に、諏訪子は鉄輪を指で廻しながら、
「あんたに虚空からの言伝を頼まれてね、伊勢の都まで行ったら出撃してるって。
割と急ぎの要件だったから追って来たんだけど……」
そう軽い口調で答える。
覇夜斗と月詠に交互に視線を向けながら。
槍を構えたまま覇夜斗は微動だにしていない。
それは乱入者である諏訪子への警戒と共に、二対一となった状況に対しての迎撃の備えの為だ。
月詠は諏訪子へと駆け寄り彼女の肩を掴むと、
「すまない洩矢!恥を忍んで頼みがある!」
と、鬼気迫る表情で言葉をかけた。
普通であれば突然そのような事をされれば驚く等の反応を返す所である。しかし――――
「あぁいいよいい
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