第十三話 燃える戦士の魂
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ような爆弾を投げているゆかいなしもべたちの姿を発見したのは今回に限っては幸運だった。
『呼ばれて飛び出てホクスポクスってなあ、あ、そうれ』
まじめにやっていると思ったのも束の間、いつもの調子に戻ってふざける悪魔を無視することで一緒に動揺をも無視し、平静を取り戻すことができたのだから。
「構えに隙がない。なんて効率のいい防御だ。これなら叛徒の薔薇の騎士が何をしても崩れないぞ!」
俺だけに見える体力ゲージや獲得点数、怒りの度合いを表示させ、これまた俺だけに聞こえる旧世紀のロックンロール風の音楽まで流して真剣勝負を茶化し続ける悪魔への苛立ちを演技に上乗せして、俺は思いきり大きな、興奮した声を出した。才覚自慢の本能は冷静かつ知的に行動することを要求していたが、こんな失敗の可能性が出てきた状況でそんなことを言ってはいられない。
半分以上自棄だった。
だが、自棄の行動は却っていい方向に転がった。
勇者を大神オーディンが嘉したのか、悪魔のおふざけ、グリルパルツァーの肉体の、遺伝子の本能、そしてオイゲン公子の機嫌、三者を相手取った俺の孤独な戦いは俺の勝利で幕を閉じることになったのである。
『その調子。心を試合に引きつけて』
「……そうなのか、アルフレット」
格好つけの俺らしからぬ興奮に紅潮した横顔を覗き込んでいる顔が四つ。
視線で指示を送ってくるブルーノと頷くオフレッサー大将に加えて、ルーカスとオイゲン公子が驚きの表情を浮かべた顔をこっちに向けていた。
ブルーノの視線の温度がさっきよりは上昇しているところを見ると、どうやらすんでのところで間に合ったらしい。
俺は再び試合への興味を取り戻したオイゲン公子に興奮してまくし立てる風で畳みかけた。
「ビットマン大尉の足元を見てください。バウアー少尉が踏み出そうとするとすかさずフェイントをかけて足を封じています。足の戦いだけでも一見の価値ありですよ!」
期待感に溢れた笑顔を作り、興奮した叫びを上げる俺の三つ隣で、オイゲン公子は岩を刻んで作ったかのような大男、動く石像働く石像とでも形容すべきバウアー少尉と対照的に小柄なビットマン大尉の足の動きを録画装置のスイッチが入ったかのように見つめ始めた。
『達人ビットマン、巨漢バウアーを古代剣術の秘奥義居合のごとき刹那の攻防で撃沈!決勝に駒を進めた〜〜〜!!!』
いつの間にか審判から離れ、解説席を作って解説ごっこに興じる悪魔が俺にしか聞こえない声でフェザーンや叛徒の都市で興行されるプロレスリングの解説者のような叫びをあげ、息を詰まらせてゆかいなしもべに介抱されている間も、オイゲン公子の目は試合場から離れなかった。
「アルフレット、さっきから見ていると二人とも視線の先に着地しているな。一度も外していない。まるで精密機械のようだ」
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