飛び降りる姉
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ル。あなたが家を出てしまってから、ずっとずっと心配していたのよ、ホントよ。母さんが許してくれなかった、なんて言い訳ね。なりふり構わず、すぐに後を追って飛び出せば良かった。母さんが怒るから、あなたの事はタブーのようになってしまって、家族の中で話題に出ることもなくて…。でも心のどこかでずっと返しの付いた針みたいにひっかかっていた。ひもじい思いをしているんじゃ無いか、寒い思いは、暑い思いは、寝るところはあるのか、誰かにいじめられていないか…そんなことばかりよ。ごめんなさいノエル。姉さんを許してね。ううん、許してくれなくたって良い。こうしてまた会えたから、それでいい。すぐ探さなかったあたしを憎んでても良いから…ノエル、元気で居てくれて、よかった…」
途中から朦朧として自分でも何言っているんだかよくわからなくなっていたけど、あたしは頬を流れる涙を感じて身じろぎした。やだ、なに泣いてるんだろ、あたし…。
そっと、米神に何か柔らかいものがあたる感覚がして、あたしの背に優しく手が添えられる。
「無理させちゃったね。おやすみなさい、姉さん…」
心優しいノエルがあたしを横たえようとしてくれているようで、あたしもその手に逆らわずお言葉に甘えようとした、のだけれど…。
見てしまった。
ベットの横に付いている、細い通りに面した道。その薄暗い路地を通る人は、あまりいない。そう、いつもなら。けれど、何気なく視界に入った大きな人影。頭まですっぽりローブを被った人間。そのローブの隙間から、緋色の長い、棒が見えた…。
(アムだ!)
あたしは咄嗟に閃き、思わずノエルを突き飛ばしてしまった。哀れか弱いノエルは、すってんと床に転がり、頭をごつんと打っていった。
「姉さん!?」
その驚きは当然のものだったろう。うとうとと微睡んでいた病人に、突如殴り飛ばされたのだから。
しかしあたしは今、そんなノエルに構っているヒマは無い!
アムは背が高いだけあって、恐るべき速さで迷い無く、一直線にこの宿屋を目指していた。目的なんて疑うべくもない。ノエルだ!アムはどうしてかノエルに危害を加えようとしているのだ。ヤツには前科がある。
ノエルを守らなくちゃいけない。それも、一刻も早く!
「どうしたの、姉さん」
「ノエルッ!今すぐこの宿出るわよっ!とりあえず入り口に鍵かけてっ!」
「えっ!?今すぐ!?それに宿出るのに鍵かけるの?」
「いいからっ!かけてっ!」
わけもわからずノエルは部屋のドアを施錠する。
「かけたよ。それより姉さん、どうして急
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