シリルなら・・・
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彼は自身の記憶を懸命に掘り起こしている最中だったようで、まだ悩んでいるようだった。
(リオンさんがなんて答えても関係ない!!俺が先に答えてしまえば・・・)
そこまで来てから、俺はある考えが頭の中を過った。それは・・・
(ウェンディの嫌いなものを暴露するなんて、いいのかな?)
向こうから聞かれたこととはいえ、わずかながらに良心が痛んでくる。でも、彼女に伝えないと信じてもらえないし・・・行くしかない!!
そう思い、息を吸い込み彼女に聞こえるようにと声を張り上げる。
「「梅干し!!」」
だが、それは隣にいるリオンさんと全くの同じタイミングになってしまった。
(やっぱりリオンさんも知ってた。しかもタイミングが被ってしまうなんて・・・)
一瞬だけ銀髪の青年に視線を向けた後、すぐに目の前の少女にそれを移す。彼女はこれを一体どう判断するんだ?
「わかった、ありがとう」
心配しながら様子を伺っていると、彼女はわずかに口元を緩めていた。
(正解がわかったのか?)
一筋の汗が頬を伝い、下へとポトリと落ちる。彼女が一体どうやって正解を見出だしたのかわからない俺は、ただこの後の少女の行動に見入っている。
クルッ
回答して間髪置かずにある方向へと一直線に歩いてくる天空の少女。彼女は点字の上をゆっくりと歩くと、ステージの際から前に向かって思いっきりジャンプする。
タンッ
ある離れ島へと着地した少女。彼女は正解なのかを確認するため、付けていたアイマスクを外し、ゆっくりと目を開けた。
「わぁ!!やっぱりシリルだったんだ!!」
開けられた瞳に映った人物を見て、嬉しそうに頬を緩めるウェンディ。彼女が飛んだその場所は、俺が立っていたステージだった。
「な・・・なんで?」
一時は彼女から偽物と思われていたために、なんでウェンディが俺の元へと飛んできたのかわからなかった。リオンさんも絶対自分の元に飛んでくると思っていたようで、面を食らった顔をしている。
「カグラさんは私の苦手なものわかんないし。それに・・・」
モジモジと体を揺すりながら言葉を詰まらせている。一体何が決定打になったのかわからなかった俺は、黙って彼女の言葉を待つことにした。
「シリルならきっと、躊躇って一拍置くと思ってたから」
可愛らしい笑みを見せながらそう言った少女に、思わず顔が赤くなる。彼女は俺の思考を完全に読み切っていたらしく、それを判断材料にしていたらしい。
「さすが」
まさかそこまで俺のことをわかっていたとは思っていなかったため、冷静に状況を判断していた彼女の頭を撫で回す。頭を撫でられたウェンディは、気持ちいいのか、目を閉じて、嬉しそうに頬を緩ませていた。
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