第18夜 喪失
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り捨てさせられたようだった。男のベルトには一度俺に預けられた鍵束が収まっている。彼女はまた、あそこに閉じ込められているのだ。
失われた命。
失われたパートナー。
失われた誓い。
残った、自分だけが得をする道筋。
(ふざけんなよ………なんだよこれ………何一つとして納得できることがないじゃないか!!)
憤怒にも似たもどかしい感情が胸中で激しくうねる。このままでは自分は何も出来ないままただ単に都に戻るだけで終わってしまう。それに、髪を梳かしてくれたギルティーネの暖かな指先や、最後のチャンスであることを伝えられた時の手の震えが『欠陥』というたった二文字の不要物にカテゴライズされるという事実が、どうしようもなく受け入れがたい。
無表情で、喋れなくて、謎だらけで、優しいのか狂暴なのか全然理解できなくて、なのに不思議と目が離せない黒髪の少女の顔が脳裏をよぎり、俺は生唾を飲み込んで手に拳を作った。
どうしてそこまで彼女の立場に自分が拘泥しているのかわからない。
わからないけれど、心のどこかで「このままでは駄目だ」と叫んでいる自分がいる。
そしてあの少女の未来を変革出来る可能性があるのは、自分しかいない。
「さて、無駄話はここまでにしてそろそろ手紙の件の返答を――」
「その前にいくつか確認したことがありますので、返答はのちほどに」
まだ終わっていない。精一杯に知識を絞り、一滴の答えをひねり出せ――トレック・レトリック。
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