第18夜 喪失
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まま廊下をまっすぐ進み、階段から降りる。自分が砦のどこにいるかがわからなかったため、とりあえず砦の入り口を探すことにした。
しばらく道に沿って探索すると、廊下を歩いている呪法師を見つけた。法衣が砦の兵士と少し違うと思ってよく見ると、それは俺にギルティーネの鍵を預けた教導師だった。あちらは俺の顔を見るなり驚き、そしてあきれたような表情になる。
「なんだそのひどい顔は。じゃがいものように腫れあがっているぞ」
「え……あっ」
言われて、思い出す。ステディに幾度となく拳で殴られた俺の顔は、自身の想像を超えてひどいことになっていたらしい。鏡がないので確認できないが、取りあえず治癒のために『流』の呪法を顔全体に展開する。
「癒せ、『活性化』」
『流』の呪法は基本的に治癒に使われる。他人に行使するのは難しいが、自分の体ならば血流を触媒に顔を治癒することなど容易だった。とはいえ、俺の使った呪法は基礎中の基礎の術であるためにそれほど強力なものではないので完全に腫れを癒し切れてはいないだろう。
使ってから視界が開ける。腫れで想像以上に瞼が圧迫されていたらしい。
「これで大分ましになりましたか、先生?」
「本当に器用な奴だ。五行式すべてを扱えるのは嘘ではないようだな」
教導師の男性はかすかに驚いたかのように目を細めたが、すぐに元の態度に戻った。
「誰と喧嘩をしたのかは知らないが、まぁ私にとってはどうでもいいことだ。それより手紙は読んだかね?」
「試験合格の手紙、でしたっけ……」
「もう一つの内容だ。それが理由で外に出ていたのではないのか?」
もう一つの内容――とっさにポケットに乱暴に詰め込んでいた手紙を引っ張り出す。あの時はステディの介入で流し読み程度しか出来なかったが、それほど長い手紙でもないから改めて目を通す。合格通知の後に、新設学科に関しての誘いが書いてある。彼の言っているのはこの返事だろう。
しかし、トレックは今更になってその手紙に小さく、しかし個人的には大きな事実が書き込まれていることに気付いた。
「『もちろん今度は罪人ではなく、新たなパートナーを付けようと思う』………とは?」
「ああ。元々今回の試験は君の素質を確かめる意味と、君に預けたあの罪人がきちんと使えるのかを試したものでもあったからな。……護衛対象を無事に連れて帰ったまではよかったが、戻った際の君の有様を考えるとやはり『あれ』は安定しない。君にはもっと安定性の高いパートナーを用意するよ」
「つまり、ギルティーネさんとのパートナー契約はこれで終了………?彼女はこれからどうなるんですか?」
「さん付けと来たか。いや、いい。彼女は次の機会があるまで牢屋に逆戻りだ。もう君の手を煩わせることもないだろうし、
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