第17夜 撤退
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って壊れたかと思ったが、カンテラは丁寧に外灯に当たらない高度を保ちながらきっちり主を追跡している。
カンテラではない。周囲でもない。他に、音が鳴る場所。
自分には見えていない場所。ギルティーネが気付けた場所。
ギルティーネは、上を見ていた。
「真上かぁっ!!」
ほとんど反射的に、トレックは『炎の矢』で外灯の合間に三発の炎弾を放つ。
そのうちの一発が――黒と紫の斑模様をした何かに掠った。
『ギア゛グッ!?』
人ならざる存在の悲鳴が、トレックに事実を告げる。
敵は――皮肉にも、人間の作った外灯の上というカンテラの照らせない安全領域から、下の人間を攻撃していたのだ。
斑模様の全てが完全に見えない場所へと逃げ込み、大きさも姿も碌に確認できない。しかしあの耳元を虫が這うような不快な鳴き声と自然に存在する生物のそれとは思えないぞっとする黒と紫のコントラストは、相手が呪獣であることを裏付けている。
あの呪獣はずっと上方にいたのだろう。そして上から何らかの方法でガルドや悲鳴を上げた学徒を殺したのだ。方法も姿も不明だが、極めて危険な存在であることは疑いようもなかった。
(だけど、それなら外灯から離れた方が得策なんじゃないのか!?高所に陣取られたらどう考えても不利だろっ!!)
ギルティーネは外灯の真ん中を突っ切るように走り続けているが、本来ならそれは自分が不利な場所に居座っているのと同じことだ。多少遠回りになっても外灯から離れた方が攻撃されるリスクが低い。それを問い質したいのに、ギルティーネは問いに答える事が出来ない存在だ。
トレックはただひたすら混乱しながらギルティーネの疾走に揺さぶられ続ける他なかった。
今、止まれば恰好の餌になる状況が完成している。もし無理をしてトレックがギルティーネから離れれば、恐らく死ぬのはトレックだ。何も出来ない。上に銃を撃つぐらいは辛うじて出来るが、疾走する彼女の背中で激しく揺さぶられながらでは手元がぶれて狙いなど到底絞れない。雨の粒を拳銃で狙うようなものである。
(せめて、あれが俺達を追いかけている間は残りの二人に矛先は向かないと考えるしかないか……?くそっ、俺の力はギルティーネさん以下だから何をされても逆らえないっていうのかよ……!!力づくが通るから躊躇なく俺に鍵を渡したっていうのか――!!)
だとしたら、荷物の中に仕舞い込んだ鍵束を持て余すトレックは、どこかで間違えたのかもしれない。今となっては後悔しても詮無きことだった。
(っていうか……これっ……この状態、走った振動が、リュックサックみたいに、俺の体を揺らしっ……!!)
碌に抵抗できず揺さぶられ続けることは、確実に人体にダメージと疲労を蓄積させる。ギルティーネの際限ない疾走
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