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満願成呪の奇夜
第17夜 撤退
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だ。

 念のため、生存の可能性を考えてドレッドが声を張る。

「誰かいるか?俺達は試験の参加者だ!生存しているのなら直ぐにカンテラの光の中に来るか、何か合図を送れ!」

 彼のよく通る声が荒野の闇に響き渡るが、返ってくる反応は一切感じられない。まるで光に照らされた外には世界そのものが存在しないかのようで不気味だ。たっぷり時間を置き、隣のステディは淡々と事実を告げる。

「……………返答、ありませんね。ドレッド様、残念ですがやはり死亡したと考えた方がいいでしょう」
「ああ……名も知らぬ相手だが、志半ばでこの結果はさぞかし無念だったろう」

 呪獣は基本的に殺害した人間の死体に手は出さないが、人知を超えた馬鹿力で吹き飛ばされて崖の下に転落したのなら誰もいない説明はつく。この高さから呪獣に攻撃を受けての転落となると生存は絶望的だろうし、どちらにしろ捜索に向かう暇もない。
 死体のないことに、ほんのわずかにだがほっとする。心を覆う暗雲は晴れる気配がないが、少なくとももう少し平静を保っていられそうだ。しかし、トレックはふとある疑問を思い浮かべた。

「返答がないということは……カンテラの持ち主のパートナーは?」

 呪法師は複数人での行動が原則だ。カンテラの持ち主にも当然パートナーがいた筈だ。その疑問に、周囲を観察していたガルドが返答した。

「これを見ろ、光源杖(ライトスタッフ)だ。未使用だが血痕が付着している」
「カンテラの持ち主は光源杖を装備しない場合が多い。それにカンテラからは随分離れた場所にそれはあった……すなわち、杖の持ち主がパートナーだったと考えるべきか?」
「だが、血痕が少ないのが気になる。致死量どころか鼻血程度しか散らばっていない。殺されたのならもっと血液が落ちていて然るべきだ」
「攻撃を受けてパニックになり光のサークルの外へ逃げ出したのではないか?それなら周囲に死体が転がっているかもしれない」
「かもしれないが、そうではないのかもしれない。どちらにしろ、長居すべきではないと考える」
「ドレッド、遺留品がてらそれを回収して早く進もう。ガルドの意見には俺も賛成だ。ここに長居してもいい事はない」

 ガルドの提案にはトレックも乗る。何が起きたのか全く分からないのは不気味だが、少なくとも事はここで起きたのだ。あるかもしれない危険が潜んでいる場所からは早急に離れた方が身の為だ。何より、一刻も早く濃厚な死の香りがするこの空間を抜け出したかった。

「………敵は、もうすでにこの場を移動したのかもしれないな。どちらにせよ警戒しつつ『境の砦』まで移動するしかあるまい。砦までもうそれほど距離はないが、全員警戒を怠るなよ」
「ああ。………ギルティーネさんも聞いたね?」

 トレックは、一応の確認のためにギルテ
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