#1誘い
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後輩に誘われてやって来たスポーツジムの更衣室で、貸出し用のウェアに袖を通す。品田祐次(しなだ ゆうじ)は、どこか緊張が滲んだ顔をしていた。
幾つか理由はあったが、最も大きいものは初めて訪れたジムに対するものではなく、ここへと誘ってきた後輩に対してだった。
艶やかな黒髪に、愛くるしい大きな瞳。小さいながらに筋の通った鼻、薄い唇。
可憐な美少女然とした容姿の後輩に、祐次は以前から好意を寄せていた。
(……ううん。レンタルだから仕方ないとは言え、あまり見栄えは良くないな)
更衣室出口にある姿見に映る自分を見て、祐次は眉をしかめた。
後輩に良く見られたいらしく、彼はしばらく悩んでいた。
やがて諦めがついたのか、学園指定のジャージをこの場で着るよりはマシだと言い聞かせて更衣室を後にした。
後輩とは休憩スペースで落ち合う予定になっていた。
落ち着きなく周囲を見渡しながら、祐次はそこへ向かっていった。
(学生っぽい人はあまりいないな。……当たり前か。運動したい奴は部活にでも参加してるもんな)
かつては祐次と後輩も部活に励んでいたが、今の学園へ進学してからは帰宅部だった。進学してからも同じことを続けられれば良かったが、この学園には彼らが夢中になっていたものはなかった。
*
「先輩、遅かったですね。何かありました?」
休憩スペースで待っていた後輩、塩屋文音(しおや ふみね)は祐次の姿を見つけると小走りで彼の下へ向かった。
「……いや、大丈夫。ちょっと迷って」
そう首を横に振った彼の顔は紅潮していた。
祐次の視線は、文音の顔と身体を行ったり来たりを繰り返す。
ピンク色のタンクトップが女性らいし体つきの輪郭を描き、細い脚には足首までの黒いレギンスが張り付いている。
「……先輩?」
視線に気付いたのか、文音が怪訝な顔で首を傾げた。
「あっ、あ、ああ、ど、どうした?」
あからさま動揺した祐次が凄い速さで目を泳がせる。
彼の取り乱し様を眺めて、文音がクスッと笑みを零した。
「ふ、文音……?」
祐次は動悸を激しくしながら、恐々と彼女の目を見た。
見蕩れていたことがバレたら嫌われてしまうのではないか。そんな不安に苛まれていた。
文音は三日月の様に目を細めて笑うと、何でもないですと首を振った。
ほっと胸を撫で下ろす祐次に向かって、文音が声を掛ける。
「せっかく来たんですから、いっぱい動きましょうよ」
明るい声を上げて、彼女が運動器具の並ぶスペースを指す。
タンクトップから伸ばされる白い腕と僅かに見えた腋に、祐次は生唾を飲んだ。
彼は劣情を抱きつつも、それを悟られないように元気な声音で言った。
「そうだな。
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