#1誘い
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体育だけじゃ鈍っているだろうし、たまには思いっ切り汗を掻くことにしよう」
「ふふっ、張り切りすぎて倒れたりしないでくださいね」
前を行く文音の揺れる黒髪からシャンプーの香りが舞う。
生地の薄いスポーツウェアで勃起してはバレてしまうと、祐次は何とか邪な感情を押さえ込むように努めた。
*
一時間弱の運動を終えて、文音は一息吐こうと提案した。
祐次はそれに同意した。自動販売機で二人分の飲み物を買って、休憩スペースで待つ彼女の下へ戻った。
(……汗を掻いた女の子って、なんかエロいよな)
薄着のスポーツウェアを纏っているのに加えて、しっとりと汗を滲ませている文音に対して扇情的なものを感じてしまう。祐次は緩んだ表情を何とか引き締めて彼女に飲み物を手渡した。
「ありがとうございます、先輩」
笑みを浮かべて頷いた文音の顔には健康的な色気が漂っている。
祐次は股間がムズムズと疼いてしまうのを感じて、慌てて椅子に掛けた。
これなら勃起してしまっても、テーブルの影になって見えないはずだ。
「先輩、どうしました? 何だか落ち着きがないようですけど」
ビクッと肩を震わせた祐次は何か誤魔化そうと周囲を見渡した。目に付いたのは二階へ続く階段だった。
「あ、あのさ……に、二階はどうなっているんだ?」
祐次が苦し紛れにそう訊ねると、文音は深い笑みを浮かべた。
それはどこか妖艶で、淫らなものを感じさせる表情だった。
視界が霞んでしまうぐらいの興奮を覚え、祐次は鼓動を高鳴らせるばかりだ。
文音は、ふいに笑みを緩めて口を開いた。
「カップル専用になってるんですよ。……行ってみます?」
「……!」
カップル専用のフロアがあることにも驚いたが、そこへ文音が誘っていることの方が重大だった。
その誘いを、彼女が自分に好意を寄せていると見るのは都合が良過ぎるが、嫌われてはいないのだろう。カップルとして扱われても構わないと言うことだ。
「い、良いのか……?」
「はい。実は先輩を誘ったのも、二階があるからなんですよ?」
黒く艶やかな髪を揺らして、そう笑った文音に祐次はドキッと胸を高鳴らせるのだった。
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