第七十一話 聖剣エクスキャリバー
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れ、大穴を水で満たした。
アスナ「あ、上!」
アスナが、さっと右手を上げた。
反射的に振り仰ぎ、上空を見てみると、天蓋近くまで萎縮していた世界樹の根が、スリュムヘイムが消滅したことで解放され、生き物のように大きく揺れ動きながら太さを増し、グレードボイドを満たした清らかな泉に根を下ろし、大波を立て放射線状に広がり、広大な水面を編み目のように覆い、先端は岸にまで達した。
泉に根が下ろされたことで、その根からは小さな若芽が息吹き、大木が立ち上がり、黄緑色の葉を次々に広げた。
これまでヨツンヘイム全体を吹き荒れていた、凍るような木枯らしは止み、暖かな春のそよ風が吹き渡る。
天蓋は、ずっとおぼろげに灯っていただけの水晶群が、小さな太陽のような強い白光を振り撒いている。
風と陽光にひと撫でされた大地の根雪や、小川を分厚く覆う氷が溶け、その下から現れた大地からは新緑が芽吹き、木は生い茂り、川がせせらぎ音を奏でる。
突然トンキーが八枚の翼と広い耳、更に鼻いっぱいに持ち上げ、高らかな遠吠えを響かせた。
それに合わせてアーサーが咆哮を轟かす。
数秒後、世界の各所から、“おぉーん”、“くおおぉーん”、という返事が返ってくる。
泉の中に囚われていたと思われる、トンキーの仲間たちだ。
それだけではなく、多脚のワニのような奴、頭が二つあるヒョウのような奴、多種多様な動物型邪神たちが地面や水面から止めなく出現し、フィールドを闊歩かっぽし始めた。
ヨツンヘイムが、かつての姿を取り戻したのだ。
リーファ「よかった。 よかったね、トンキー。 ほら、友達がいっぱいいるよ。 あそこも、あそこにも、あんなに沢山。」
トンキーの背中に座り込んだリーファが嬉し涙を零しながら、トンキーの頭を優しく撫でていた。
コジロウがリーファを抱くようにして、シリカが同じようにしゃくりを上げ始め、腕組みしたクラインが顔を隠すようにソッポを向き、アスナも目許に涙を浮かべながら、座っている俺の肩に頭を乗せて、この美しい光景に見入っていた。
俺も胸に込み上げてくるものがあった。
最後に、俺の頭から飛び立ったユイが、アスナの肩に着地すると髪に顔を埋めた。
あいつは最近、俺に泣き顔を見せるのを嫌がるのだ。
まったく、どこで学習したんだか。
と、その時、声が聞こえた。
ウルズ「見事に、成し遂げてくれましたね。」
トンキーの頭の向こうに、金色の光に包まれた人影が浮いている、《湖の女王ウルズ》だった。
前回と違い、今回は実体化している。
隠れていたという泉から脱出出来たのだろう。
ウルズ「《全ての鉄と木を斬る剣》エクスキャリバーが取り除かれたことにより、イグドラシルから断たれた《霊根》は母の元に還りま
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